内容説明
あるマゾヒストが夢想したもうひとつの日本、邪蛮。約40年前に描かれた禁断の書、復刊。
著者等紹介
石ノ森章太郎[イシノモリショウタロウ]
1938年1月25日宮城県登米郡中田町石森(現・登米市中田町石森)生まれ。本名、小野寺章太郎。1954年『二級天使』でデビューし、その後『サイボーグ009』『仮面ライダー』『佐武と市捕物控』など次々と作品を発表。従来のストーリー漫画にとどまらず、『HOTEL』『マンガ日本の歴史』など、マンガの可能性を開拓。1985年、石森章太郎から、石ノ森章太郎と改名。創作活動以外でもマンガジャパン代表世話人や、(社)日本漫画協会常務理事をはじめとする様々な役職を兼務。1998年1月28日逝去
沼正三[ヌマショウゾウ]
1926年3月19日、福岡県福岡市生まれ。本名、天野哲夫。旧制福岡商業を卒業後、満州特殊鋼鉄株式会社に就職、帰国して海軍に入隊。復員後は、風俗誌にマゾヒズムをテーマにした原稿を投稿する傍ら、数々の職業を遍歴し、1967年、新潮社に入社。同社校閲部に勤務しながら、小説・エッセイを書き続ける。風俗誌「奇譚クラブ」の連載をまとめた『家畜人ヤプー』が戦後最大の奇書として話題となる。2008年11月30日逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いりあ
7
1971年に都市出版社から刊行された石ノ森章太郎による「劇画家畜人ヤプー」の第1巻です。沼正三の「家畜人ヤプー」をコミック化したもの。石ノ森章太郎は、なぜこの本をコミック化しようと思ったのだろうか。原作はSF/SM作品としてエログロナンセンスを煮詰めたような内容ですが、本作では絵になり、別の作家の視点で再構成しているからなのか、意外と諸々の内容が薄くなった印象。そして漫画の途中で設定説明の文字で長々と入るのはちょっと読みにくくて難点だと思う。本作が「仮面ライダー」と同じころに描かれていたことに驚いた。2024/11/02
太郎
4
圧倒されたの一言。 原作を読んでいないので、旧日本人がヤプーという家畜として扱われたりする背景を説明をする場面での情報量が多すぎたのが若干辛かった。 しかしこれだけの設定を練りこんで書くというのは凄い。2011/01/13
Kavi
3
敗戦後の日本で生きる若者の、敗北した日本人の不甲斐なさへの怒り、誇りを失いつつある日本人への怒り、欧米人に媚びへつらう政治への怒り、欧米人・欧米化を甘受する日本人への怒り、勝者然として日本の政治に介入する欧米人への憤怒と偏見。原作者のそんな感情が溢れているように思える。狂人というより、怒りなんじゃないかと。これは決して自虐ではない。原作者の沼正三の正体は不明らしい。怒りを募らせた複数人の若者のアイディアから生まれた話のように思う。ディテールの細かい設定などは、悪ガキ達の悪ノリのようだ。2012/02/06
くらた
3
日本人が家畜として扱われる未来の世界を描いた、壮絶マゾSF。旧日本人=ヤプーは、未来人のため、肉便器に舌人形に、そして時には玩具に身体を作りかえられる。天照大神、木花咲耶姫神なども持ち出してきて、日本文化が作中で徹底的に蹂躙されていて恐ろしかった。コマの間にびっしり書かれた注釈も、読みにくくはあるが非常に緻密で、本当はそうなのかもしれないとさえ思ってしまう。気が狂いそうな読書体験だった。2010/04/24
飛鳥なつめ
2
復刻版ではない方を読了。原作未読だが、とりあえずこちらから入ってみようかな…と。端々に細かい字で挟まれる説明文は確かに読みにくかったので、若干斜め読み。SFはあまり受け入れられない体質なので正直きついところもあったが、世界観や設定の気持ち悪さは興味深いので、とりあえず4巻まで読んでみようかな。2016/02/11