感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
マリリン
42
三部作と言われる「破滅の序曲・夏の花・廃墟から」を読む予定変更。教養として学んだり伝え聞いた事しか知らない当時のこと。著者が体験し綴った言葉から、やり場のない怒りや悲しみや叫びと共に想像を絶する悲惨な状況がリアルに伝わってくる。特に「心願の国」は、静寂な春に潜む不穏な空気の中で綴ったかのような言葉から、深淵に潜む深い闇を感じた。 本を閉じ思い出したのは、仕事の移行期お世話になった会社の社長の事。長崎で被爆され被爆手帳を見せてくださった。弔事に触れた時の行動は当時理解できなかったけど、当然の反応だったのだ。2022/05/25
niki
5
原民喜を初めて読む。こんなに繊細な人だったとは。 愛妻と生きられた時間が一番楽しかったのだろう。その後の彼の人生は悲しさと苦しさで満ちている。 「街が全焼してしまったら、明日から己はどうなるのだろう」という不安は私たちと同じ。街を死守させようと防空要員の疎開は認められない怖さ愚かさ。原爆投下直後の人の姿を「奇怪な人々」と表現する。 原爆投下を体験した人だけが書ける生々しさ。「自分のために生きるな、死んだ人たちの嘆きのためにだけ生きよ」生き残った人間もつらいのだ。 戦争なんてやめればいいのに。2023/11/01
niki
3
一年半前に読んだ本。当時よりずっと悲しみや苦しさが胸に迫ってきて、同じ本かと驚く。私の心が変わったのか。 『翳』に描かれる戦前の穏やかな暮らしが奪われてしまう不条理さが信じられない。『美しき死の岸に』に描かれる愛妻の死は悲しすぎて読んでいられない。「こんなにも悲しい、こんなにも悲しいのか」。『夏の花』の「愚劣なものに対する、やりきれない憤り」という一文がしみる。『鎮魂歌』は苦しすぎる。 愛する妻が行き続けていたら筆者はどんな人生を歩むことが出来たのか。逃れられない苦しさが存在することを突きつけられる。2025/03/12
子なめこ
1
小さな村まで読了。 大学の講義で扱った『夏の花』は読んだことがあったのですが、被爆前からは読んでいなかったので借りて見ましたが登場人物が誰なのか分からなくなることが多々ありました。奥さんを亡くしたその年の8月6日の体験談は、人々が次第にぐったりしていく様や断末魔が朝方鳴りやんでも耳の中には残る様が書かれていました。顔を原子爆弾によって火傷した男性が蛆が耳の中に入ろうとして困ると笑っている場面にゾッとしました。2020/11/23
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