内容説明
現実に立ちすくむ若者たち、家族という不思議への問い、そして死の準備とは…希望や幸福を語ることをためらわぬ著者の、社会に向けられた真摯でしなやかなまなざし。最終講義「子どもの本のもつ力」を収録。
目次
不器用な日々「パリ20区、僕たちのクラス」を観る
違和と問いの中で
家族というふしぎ
私たちは、必死にがまんしないできた
四組の夫婦のこと
ひと輝くとき
行方不明の時間
人が物語るということ
幻なき民は亡ぶ
あれが始まりだった〔ほか〕
著者等紹介
清水眞砂子[シミズマサコ]
1941年、北朝鮮に生まれる。児童文学者・翻訳家。2010年3月まで青山学院女子短期大学教授。おもな著作に、『子どもの本のまなざし』(洋泉社、日本児童文学者協会賞受賞)。訳書に、アーショラ・K・ル=グウィン「ゲド戦記」(全6巻、日本翻訳文化賞受賞)ほか多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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kiho
7
日常と真摯に向き合ってきた清水さんのこれまでがわかる一冊…不器用な…とは、ごまかさず逃げずそこにいるからこそ…なんだなと感じる☆我慢しないことの大切さと難しさ、何をもって幸せなのか…いろんな問いかけがじんわり響いてくる♪静かに噛みしめたいような、そんな一冊!2013/11/18
みけのすずね
5
ゲド戦記訳者、清水眞砂子さんの思索文二冊め。不器用でいいよ、斜に構える方が青臭い。「どうせ」と希望を手放してしまえば苦しむことも悩むこともない。生きたいから、光が欲しいから悩む。物語への応援は自分への応援。たまにでもいいぞ、と思える日があれば大抵頑張れるもの。人間の悪意や不寛容から生まれた美しさは、追われた記憶のないものには快適でいかにも善きことだから、意地悪だ。死の準備はただひとつ、そのことを覚悟すること。死は明け渡しなのだ。愛が言葉を生み、言葉が私たちを解放し、またいっそう関係を深めていく。2020/05/10
舟江
4
断片的には、素晴らしい宝石が散りばめられていたが、根源的な部分が、小生と全く違い。まぶしすぎて、読んでいて非常に疲れた。しかし、考え方の違うしかも異性の方の、本を読むのも悪くないと思えた。 同僚の方々には、さぞかし煙たがられたことであろう。認知症病院の、ボランティア担当の看護師さんの顔が浮かんだ。2021/05/15
joyjoy
3
エッセイ集。「死の準備とはただひとつ、そのことを覚悟すること」、自分にはまだ覚悟はないが、憧れのようなものはあるなぁ。「縁側の陽だまりで」、読みたい本がまた増える。「人が物語るということ」、自分が物語れるものは? 海の記憶が思い浮かぶが、それはにおいや色、揺らぎ、冷たさ、しょっぱさなど、感覚的なものが多くを占め、それらをうまく言葉に出来るかどうかは自信がない。表現できるようになりたい。2020/03/28
ももんが
3
タイトルは不器用となっているが、信念を持って生きてきた作者の強さを感じる本。家族や夫婦、教師のあり方を再考してみてもいいかもしれない。夫婦が「我慢しないで向き合う」という箇所がなかなかいい。伊、映画鉄道員で家族がバラバラになった時「皆が少しづつ我慢したからこうなった」というフレーズを紹介しているが、納得できるような気がする。本の中で紹介されている映画や本も見てみたいと思った。2013/06/16