内容説明
歴史学、動物行動学、生物進化学(統計学)、惑星物質科学、情報科学(人工知能)などさまざまな分野の研究者たちが、それぞれの文脈での科学的「事実」の作られ方を解説・考察する対話的論集。
目次
序章 すれちがうたくさんの「事実」(小俣ラポー日登美)
第一章 どのように「事実」を構築するのか?―歴史家の仕事(ジャン=フレデリック・ショーブ)
第二章 奇跡と科学的「事実」の攻防戦―トリノ聖骸布をめぐる実験の解体(小俣ラポー日登美)
第三章 生き物の「こころ」は科学的「事実」になりうるか―動物行動学における科学論争の解剖(佐藤駿)
第四章 歴史と科学をつなぐ道―アブダクションの観点から(三中信宏)
第五章 可視化から始まる「事実」―地球外物質のミクロな世界(松本徹)
第六章 人工知能が紡ぎ出す「事実」の権力性(包含)
終章 めぐりあうたくさんの「事実」(小俣ラポー日登美)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
pushuca
4
刺激的な論集。すべての研究者に勧めたい。2025/06/24
Go Extreme
2
交差点は東西南北に伸びる碁盤の目のように複数の道路が交差する場所 レンガ工場のカオス 複雑な行間を保存する手段 懐疑的な眼差しを維持 新しい見方を紡ぎ出す 自分を疑うという誠実さ 言葉を復元する 真実を揺り共に真実に到達すること 聖骸布に残る痕跡 人の手を介さない 動物の「こころ」と科学的「事実」 擬「自分」主義 共有しうるリアリティ 一つの物語を編むこと 痕跡解読パラダイム 異世界からもたらされた 太陽誕生以前に生成されていた 野良AI 科学の疎外 正答に至るための努力の過程2025/05/05
放伐
1
学問にかかわる全ての人に読んでほしい本。各著者の論旨ももちろんながら、引用してくる文献の多様さが、このような試みを可能ならしめる豊饒な土壌をなしていることがよく伝わってくる。また終章では、「文理横断」的なことを企んだ先人について語られるが、あえなく失敗したようにみえる彼らのことを知りながらあえて同じことに挑戦する本書のよりどころが「事実」という形而上学的な概念であることはとりわけ興味深い。いまだ瀰漫する「「ポストモダン」的「事実」」観が刷新され、建設的な議論ができるようになることを願う。2025/04/18