内容説明
なぜ人は趣味をほどほどに、あるいは真剣に続けるのか?趣味として自分の好きなことに打ち込む人びとや、彼・彼女らを取り囲む趣味環境に注目し、趣味に生きる文化のあり方やそこでの葛藤を描きだす。
目次
本書の基本的な視点
1 日本におけるシリアスレジャーの意味(趣味の大衆化―テイストとホビーの境界線;アマチュア―「稽古(事)」と「たしなみ」
シリアスレジャーとしてのボランティア―余暇か労働か)
2 シリアスレジャーに打ち込む人びと(趣味と放送―シリアスレジャーとして始まったCATV;ランニングの専門志向化とトレイルランニングへのキャリア;より良い生き心地を求めるLGBTのシリアスレジャー;夢追いバンドマンにとって音楽活動は趣味なのか,仕事なのか;それでも舞台に立てる理由:まじめに遊ぶための人間関係と規則;「アイドル,はじめました。」:アイドルは仕事なのか,趣味なのか)
3 シリアスレジャーに打ち込む環境(SNSが築く弱い趣味縁の面白さ;メディアが可能にする趣味実践―「学習」と「観戦」におけるメディアの利用;「趣味」としての部活動―学校教育が醸成する発表会的心性;日系人の「日本語で歌う文化」:シリアスレジャーでつながるマイノリティ;「地域を取り戻す」という遊び:スポーツを通じた観光まちづくりを事例に;政策的に「活用」される自由時間:シリアスレジャーのあやうさ)
Appendix ロバート・ステビンスへのインタビュー
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
くさてる
15
「アマチュア・趣味人・ボランティアによる活動で、彼・彼女らにとってたいへん重要で面白く、充足をもたらすものであるために、典型的な場合として、専門的な知識やスキル、経験と表現を中心にしたレジャーキャリアを歩み始めるもの」これがシリアスレジャーの定義なのだけど、要するに仕事と比較しても遜色ないほどのめりこみ熱中する趣味活動について、様々な分野から分析、解説した一冊。学術書なので読みやすくはないけれど、それぞれの章で一冊の本が書けそうな濃い内容で、面白かった。2025/11/09
センケイ (線形)
10
仕事じゃないけどこだわってやっている事って幾つかあって呼び名に困っていたんだけど、これだったんだなと思う。あわよくば仕事にしたいこととか、そうでなくても一生ちゃんとやりたいこととか。そういうのを、お金にならないからってただの "趣味" って自虐的に言っちゃうとは勿体ないかもしれないなと、そういう領域を開いてくれた本だ。あとは個人的にコミュニティ論が最近好きなので、趣味縁が作られる過程や、関連する文献の話が見つかったのも嬉しかった。2022/01/23
mittsko
5
我流オタク論の参考書として手に取った。シリアスレジャーという概念が現代日本のオタクの生きざまにぴったりではと思ったのだ。が、ボクの構想とは少々ズレがあった。本書では「専門性」への注目が大きく、プロフェッショナルならぬ「アマチュア」がキーワードになっているわけだが それはオタクを解するのに必要性が大きくはないだろう(無論、それがばっちり当てはまる局面もある。二次創作など) 自律的な個人という理想から重なりズレる「ファン」のシリアスレジャー、シリアスレジャーとしての積極的な消費… ボクに見えているのはそれ!2025/11/06
Ayana
5
アマオケにどっぷり浸かっていた自分にとって、演奏活動は仕事ではないけれど、重要で、専門的で、経験が必要な真剣な活動だった。だから「趣味でしょう」と言われると軽んじられている気がした。そうか、これがシリアスレジャーか。仕事でも(カジュアルな)趣味でもない、もうひとつの概念。ただ、余暇研究が新しい価値観をひらくには、社会に経済的余裕がないと難しいのではないか。個人の人生において趣味活動をどう位置付けるか、考えてみるのには役立つと思う。自分の場合は趣味のままでいい活動と、仕事にしたい活動は明確に違う。2025/02/02
不健康運動
4
久々に骨太な評論を読んだ。 ページ数は少ないながらも、読破にほぼ1カ月かかってしまった……。 個人的には、食えていないバンドマンはバンド活動のことを「趣味」と言いたくない、将来「仕事」にするぞというスタンスな一方で、食えていないアイドルはアイドル活動のことを「趣味」と思い込むことで、現状の金銭的問題と精神的に折り合いをつけていたのが印象的だった。 地下アイドルは売れていないバンドと違って、セルフプロデュース文化がまだあまり育っていない点が、バンドマンの正反対な考え方に至るのだろうかと、素人ながら考察した。2025/10/31




