内容説明
“古都のゆりかご”奈良盆地のいま、その特徴的な地理環境を明らかに!
目次
第1章 盆地の成り立ちと地震災害(琵琶湖は山だった;「六甲変動」―活断層の発現と盆地の細分化;活断層と地震災害)
第2章 気候と農業(気候;農業;奈良盆地の気候の特徴;奈良盆地の水の特徴;奈良盆地の農業の特徴)
第3章 都市と日常生活行動(奈良盆地と日常生活行動;通勤行動;買い物行動;買い物困難者の出現;おわりに)
第4章 盆地の交通(プロローグ―開く交通と閉じた交通;奈良盆地の交通路と鉄道;奈良盆地をめぐるJRと近鉄;JRと近鉄の駅はなぜ離れているか;エピローグ―開く交通の時代)
著者等紹介
木村圭司[キムラケイジ]
奈良大学教授。地理学専攻。1968年、大阪府堺市生まれ。東京大学大学院博士課程単位取得退学。博士(理学)
稲垣稜[イナガキリョウ]
奈良大学准教授。都市地理学専攻。1974年、岐阜県大垣市生まれ。名古屋大学大学院博士後期課程修了。博士(学術)
三木理史[ミキマサフミ]
奈良大学教授。交通地理学専攻。1965年、大阪府羽曳野市生まれ。関西大学大学院博士後期課程中退。博士(文学)
池田安隆[イケダヤスタカ]
奈良大学教授。自然地理学専攻。1951年、神奈川県茅ヶ崎市生まれ。東京大学大学院博士課程単位取得退学。理学博士(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Shoji
31
奈良盆地を地理的特徴から考察しています。論考は、奈良盆地の地震災害、気候と農業、都市と日常生活行動、交通の四件が収められています。例えば、交通の項では、JR駅と近鉄駅が隣接するケース(天理駅、桜井駅、王寺駅)、隣接しないケース(奈良駅、高田駅)、それぞれを大学の先生が学問的に解説なさっています。文章は平易で分かりやすく、興味深く読むことが出来ました。2022/06/12
謙信公
11
奈良盆地の自然・人文・社会環境について4名の地理学者による考察。奈良盆地は地殻変動による隆起で四方が高まり形成された。盆地気候により稲作と近郊農業が盛ん。大和の伝統野菜も栽培されている。大阪・京都のベッドタウンとして人口が増加したが、高齢化が進み買物難民問題を抱える。通勤・買物の大阪指向は低下し、盆地内回帰もみられる。現近鉄支線は元々国鉄の下請路線であったが、近鉄幹線に統合され現在の路線網となる。しかし、国鉄・近鉄の共同駅化は原則として行われず、盆地内の移動の問題は盆地特有の交通のあり方を発端としている。2021/03/04
chang_ume
10
比較的おとなしめの論考が並ぶなか、「盆地の成り立ちと地震災害」(池田安隆)が、堆積盆地の概説として学びよい内容。近畿三角帯の広範囲な沈降運動(負のアイソスタシー)について、水平方向の圧縮力よりも垂直方向への引張り力を重視。マントル中の密度分布不均一を確かとする一方、その要因は不明とする見解です。そして次プロセス(六甲変動)は、地形発達の一般的な考え方も交えて、活断層の発現と盆地の細分化のメカニズムを平易に解説。要領よく理解が得られて、素直にためになりました。2020/04/28