内容説明
「市場と民主主義の揺らぎ」を問い、現代社会科学に多大な影響を与え続けるフリードリヒ・ハイエク。その多面的思想体を通して現代の自由社会が抱える問題を読み解く格好のハイエク入門。
目次
第1部 ハイエク思想の多面体(ハイエクの「法の支配」―自然法論と共和主義的性格;ハイエクの保守主義―ハイエクはバークをどのように読んだのか;ハイエクの共同体論―「大きな共同体」と「薄い伝統」;ハイエクの社会科学方法論―転換問題を越えて;ハイエクの心理学と進化論―『感覚秩序』と『文化的進化』 ほか)
第2部 ハイエクとその批判者たち(ハイエクとナイト1―法の支配と民主主義;ハイエクとナイト2―「リベラル」批判の二つの帰趨;ハイエク、ケインズ、マルクス―新自由主義後のハイエク;ハイエクとシュンペーター―資本主義と民主主義の未来;ハイエクとロールズ―自生的秩序と社会正義 ほか)
著者等紹介
桂木隆夫[カツラギタカオ]
1951年生まれ。早稲田大学政経学部卒業、東京大学大学院法学政治学研究科博士課程修了。法学博士。法哲学・公共哲学専攻。現在、学習院大学法学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Moloko
3
ハイエクの思想について、バークなどの保守主義らマッキンタイアの共同体論やカールシュミットやナイトやシュンペーターやロールズなどと合わせた分析や比較を行う章も交えて多面的に論じた本。ハイエクを理解するのにこれだけの量の著作に踏み込まないといけないかとも思ったが、社会や政治、資本主義と民主主義、自由論や福祉国家等々の多方面で発揮する洞察力を感じられた。原典に当たれればいいかな2017/03/25
ぽてと
1
ハイエク以上に、比較対象として持ち出されたナイトに関心が出てきた。それはともかくとして、彼の理論のなかで最も重要な位置を占めるものは「法の支配」である。市場経済を円滑にし、かつ保護するためには最低限のルール、すなわち予測可能であり、命令形ではなく禁止からなる法が必要なのだ。不断の努力によって、カタラクシーとも呼ばれる自生的秩序としての市場秩序を守らなければならないと説く経済学者のハイエクが法の探求に到達したのは必然と言える。2016/05/16
ぐっさん
0
ハイエクの主張のまとめとしてだけでなく、他の経済学者との意見の比較としてもうまくまとめられていてわかりやすい。 ある程度ハイエクの著書や主要な経済学者の本を読んでいる人にとって最適な本。2015/01/14
葉
0
自主的秩序・市場と進化への信認、法学と社会学、コミュニタリアニズム、ゲームと法などについて書かれている。心理学的な部分も強く、インセンティブばかりではない。ケインズやマルクスへの異議として様々な批判を繰り返してくる。また、シュンペーターの市場社会主義に対しても述べられている。奴隷への道も記されている。2014/07/18