出版社内容情報
本書の関心は、アメリカ幼稚園運動期に、アメリカにおいて幼稚園と小学校が接続されゆく過程と、その過程でフレーベルの思想の捉え方を巡る幼稚園関係者内部における対立に向けられている。幼稚園運動における幼小接続の流れを、フレーベル主義と進歩主義の対立として描き、幼稚園カリキュラムおよび幼稚園と小学校の接続カリキュラム策定の過程における論争を検討することで、幼稚園運動当時の実践家たちの幼稚園教育観の抽出を試みる。そして、これらの先行事例をもとに、日本における幼小接続の取り組み、またその方向性について、示唆を得ることを目的としている。
【目次】
序論
第1章 19世紀アメリカ幼稚園運動の一断面―エリザベス・P・ピーボディによる幼児学校批判と幼稚園教師養成にみる幼稚園教育観―
はじめに
1.ピーボディによる幼児学校批判
1-1 幼児学校の性質 1-2 ピーボディによる幼児学校批判の論点
2.幼稚園公立化に対するピーボディの態度
3.ピーボディによる幼稚園教師養成の意図
小括
第2章 超越主義と進歩主義教育の間―ミッシング・リンクとしてのピーボディ幼児教育思想―
はじめに
1.超越主義と進歩主義教育
2.超越主義者としてのピーボディ
3.進歩主義教育者としてのピーボディ
3-1 アメリカ初の英語幼稚園開設とフレーベル主義の普及 3-2 公立学校幼稚園に対する姿勢
小括
第3章 ピーボディ教育思想における幼稚園の位置づけ―家庭・学校との関係に焦点化して―
はじめに
1.アメリカ幼稚園運動とピーボディ
1-1 アメリカ初の英語幼稚園 1-2 渡欧とフレーベル主義幼稚園教師との接触 1-3 バックヤードとしての活動
2.オルコットとの関係――幼児学校批判
3.ハリスとの関係――公立学校幼稚園への批判
小括
第4章 アメリカ幼稚園運動期におけるキリスト教的人道主義の諸相―幼稚園を拠点とした社会事業に着目して―
はじめに
1.アメリカ幼稚園運動とキリスト教
1-1 キリスト教的人道主義 1-2 アメリカ幼稚園運動におけるキリスト教教会幼稚園
2.幼稚園運動におけるキリスト教的社会変革のエートス
2-1 「社会的福音」としての幼稚園教育 2-2 社会事業としての展開
3.幼稚園運動の岐路と慈善幼稚園
小括
第5章 ウィリアム・T・ハリスの幼児教育思想―アメリカ幼稚園運動における幼小接続の原点―
はじめに
1.ハリスによる幼稚園の位置づけ
1-1 公立学校幼稚園の設立 1-2 幼稚園教育に対するハリスの立場
2.フレーベル主義幼稚園と進歩主義幼稚園の間
2-1 サブ・プライマリー化の原点としてのセントルイス公立学校幼稚園 2-2 進歩主義幼稚園の台頭
3.進歩主義教育へのハリスの態度
3-1 子ども中心主義に対する批判 3-2 進歩主義教育の背景となる新心理学と児童研究への抵抗
小括
第6章 ハリス教育思想の一断面―平等主義に立つ教養教育重視の伝統主義の背景再考―
はじめに
1.平等主義的要素の起源
2.思弁的心理学による「新心理学」、児童研究運動への抵抗
2-1 『教育の心理学的基礎』の出版 2-2 ハリスの社会観と教育観 2-3 教養教育重視の伝統主義
3.民主主義社会の建設に向けた個人と社会の弁証法的発展
目次
19世紀アメリカ幼稚園運動の一断面―エリザベス・P・ピーボディによる幼児学校批判と幼稚園教師養成にみる幼稚園教育観
超越主義と進歩主義教育の間―ミッシング・リンクとしてのピーボディ幼児教育思想―
ピーボディ教育思想における幼稚園の位置づけ―家庭・学校との関係に焦点化して―
アメリカ幼稚園運動期におけるキリスト教的人道主義の諸相―幼稚園を拠点とした社会事業に着目して―
ウィリアム・T・ハリスの幼児教育思想―アメリカ幼稚園運動における幼小接続の原点―
ハリス教育思想の一断面―平等主義に立つ教養教育重視の伝統主義の背景再考―
19世紀アメリカにおける幼小接続カリキュラムの原像―セントルイス公立学校幼稚園に焦点を当てて―
スーザン・E・ブロウの幼稚園教育実践の背景―アメリカ幼児教育思想への絶対的観念論の反映―
アメリカ幼稚園運動期におけるフレーベル主義保守派による進歩主義幼稚園批判の論点―ブロウの幼児教育思想に焦点化して―
アリス・テンプルの幼稚園教育思想―アメリカ進歩主義教育期における幼小接続カリキュラム開発の試み―
テンプルによるシカゴ大学附属実験学校の展開―幼稚園カリキュラムへのデューイの影響―
アメリカ進歩主義教育期における幼小接続の試みに関する考察―ホーレス・マン幼稚園のカリキュラムを中心に―
パティ・スミス・ヒルのコンダクト・カリキュラム創造過程―フレーベル主義批判の論点とその克服を中心に―
エラ・ヴィクトリア・ドブスの手工教育実践に関する考察―アメリカ進歩主義教育期における幼小接続の試みの一断面―
ウィリアム・N・ヘイルマンの幼小接続構想―初等教育におけるフレーベル主義保守の論理―
アメリカにおける幼小接続カリキュラム開発過程―国際幼稚園連盟における論争とデューイ・スクールの実践に着目して―
著者等紹介
山本孝司[ヤマモトタカシ]
1971年生。広島県大竹市出身。広島県立五日市高等学校卒業後、早稲田大学教育学部教育学科教育学専修に学ぶ。1997年に早稲田大学大学院教育学研究科修士課程学校教育専攻を修了し、2003年に早稲田大学大学院教育学研究科博士後期課程教育基礎学専攻単位取得満期退学。2018年2月に論文「ブロンソン・オルコットの超越主義思想に関する研究―アメリカ進歩主義教育の思想的水脈再考」で早稲田大学より博士(教育学)の学位を授与される。職歴としては、九州看護福祉大学看護福祉学部専任講師・准教授、岡山県立大学保健福祉学部教授を経て、西南学院大学人間科学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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