内容説明
『憐憫の孤独』は二十の中・短編で構成されている。物語もあればエッセイもある。初期「牧神三部作」(『丘』『ボミューニュの男』『二番草』)のあとに書かれた作品で、ジオノ文学の重要な要素が見事に凝縮された内容豊かな傑作である。これ以降に出版される多種多様な作品群を予告するような物語が多く含まれており、ジオノ文学の扇の要にたとえられるような作品だといえよう。
目次
憐憫の孤独
牧神の前奏曲
畑
イヴァン・イヴァノヴィチ・コシアコフ
手
アネットあるいは家族のもめごと
道端にて
ジョフロワ・ドゥ・ラ・モッサン
フィレモン
ジョズレ
シルヴィ
バボー
羊
伐採人たちの故郷で
大きな垣根
パリ解体
磁気
大地の恐怖
漂流する筏
世界の歌
著者等紹介
ジオノ,ジャン[ジオノ,ジャン] [Giono,Jean]
1895年、南仏オート=プロヴァンスのマノスクに生まれる。父は靴職人、母は洗濯業を営む。1911年、地元の銀行で働きはじめる。1915年から1919年まで第一次世界大戦に一兵卒として従軍。28年に発表した『丘』で文壇デビュを果たす。29年、作家活動に専念する。1970年死去
山本省[ヤマモトサトル]
1946年兵庫県小野市生まれ。1969年京都大学文学部卒業。1977年京都大学大学院博士課程中退。フランス文学専攻。信州大学教養部、農学部、全学教育機構を経て、信州大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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きゅー
15
『木を植えた男』が有名だけれど、ジャン・ジオノは他にも多くの物語を書いている。本作は自然とともに生きる人々を描いた中短編集。「畑」という短篇が良かった。ある男が妻と子供と暮らしている。彼は少しでも収入を増やそうと、余分な部屋を青年に賃貸しすることにしたのだが……。男の朴訥さが沁みる一篇。ジオノの物語の登場人物は土地に縛られ、土地に生きている。それは華々しさから最も隔たった生活ではあるが、彼ら実直な人びとが必死に生きる姿はそれだけで共感できる。悲しいまでに愚直に生きる男の中にかいま見える生の飛躍が美しい。2016/10/19