内容説明
劇作家と演出家の「闘い」が見えてくる!「演出家」の誕生から、1960年代パフォーミング・アーツの出現まで。舞台に生命を吹き込む「演出」が、社会的背景や思想に如何に影響され変わっていったのか。ヨーロッパを中心に「演出」の変貌を解説。「演出」を知らずして演劇を語るべからず!
目次
俳優の時代
チェーホフのメタファー
スタニスラフスキーと心理の創造
劇場のテクノロジー
クレイグと劇的空間
自然主義演劇の時代
キャラクター主導のナラティブ
ピランデッロから不条理へ
反カタルシス―ブレヒトの演劇革命
観客の発見
不条理演劇
新しい空間をもとめて
比喩としての演劇
著者等紹介
川島健[カワシマタケシ]
ロンドン大学ゴールドスミス校にてMphil取得。東京大学大学院にて博士号取得(2008年)。早稲田大学高等研究所助教、広島大学大学院文学研究科准教授を経て現同志社大学文学部准教授。2010年福原麟太郎賞(「ベケットのダブリン詩篇」研究助成)受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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うえ
7
「ワーグナーが「未来の芸術」を出版した1848年は…諸国民の春と呼ばれます。フランスで起こった二月革命がヨーロッパ全土に広がり…ウィーン体制が崩壊します。そこで生まれたのが国民国家という概念…「国民」とは、身分的差異を捨象し個に還元された人々の群れです。ワーグナーは劇場においてそれを再びまとめようとした…統治者を失った主権者国民に新たな「主」を授けようというのがワーグナーの芸術崇拝の試みです。その前提として、芸術の前においてはみな平等であるという信念があったのです。そのような願いがマーラーに引き継がれた」2022/05/20
Oltmk
1
19世紀に演劇で「演出家」という存在が生まれて以降、演劇というものがどれだけ演出家の社会性・思想性などに左右されて、現代の演劇に影響を与えてきたのかを説明する書籍。映画やアニメ同様に、演劇の歴史の中でも社会性や時代性を得てきたことがよく分かる上に演劇自身が劇場の中から社会全体に変化していったのかもよく理解できた。演劇という創作の近代・現代史を知りたい人間ならお勧めしたい書籍だった。2021/12/16
そーやかとー
1
歴史的・文化史的な背景と関連して演劇における演出が誕生していく過程が描かれている。 また現代一般に演劇の必須要件と考えられている、演出・俳優・舞台装置はかつて存在しなかったというのはかなり驚き。 説明のために演劇の事例も豊富に引用されているので、よみやすい。演劇を見に行きたくなった。2021/03/30
my
0
ラボ課題図書。演劇がどのような発展と変遷をたどったのか、演出の視点から見ていくことで各時代の社会と演劇の関係性をあきらかにするとてもいい教科書でした。ブレヒトやベケットの仕事について非常に(めずらしいほど)簡潔にまとまっており著者のバランス感覚のよさがうかがえる。2017/07/17
さばくたにえりこ
0
深いとは言い難いし、あまりに簡素な記述だが、包括的入門書としてある程度しっかりしたものになっているのではないか。少なくとも、基礎的な文献については網羅されているように思うし、社会的な流れから不可分の歴史として演劇を論じているので、他分野の人への入門書もしても勧められるもののように思う。2017/07/24