内容説明
ロシアを代表する劇作家にして、短篇小説の名手アントン・チェーホフ(一八六〇‐一九〇四)。そのごく短い作品『学生』を主な題材として取りあげて、精読。一つひとつの細部に目をとめ、なにが描かれているのか、なぜそう描かれているのかを考えながら読むことで、チェーホフという作家、そしてロシア文学の特質が驚くほど明らかに。
目次
第1章 アントン・チェーホフ『学生』―作品全文
第2章 舞台背景を読む
第3章 風土を探る
第4章 心情に分け入る
第5章 思考を解きほぐす―ふたたび『学生』へ
第6章 視線をたどる
第7章 感覚に寄り添う
第8章 言葉を味わう―晩年の作品『僧正』を中心に
著者等紹介
郡伸哉[コオリシンヤ]
1957年生まれ。中京大学国際教養学部教授。大阪外国語大学大学院修士課程修了。ロシア文学専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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しゅん
1
『学生』という数ページ程度の短い小説から、チェーホフの世界の広がりを観測する。2016年の日本人では気づかないポイント、キリストの受難を記念する日に神学生が狩りをしていることの不自然さや冠水した草地がロシアの日常的風景であることなどを教える。特にチェーホフ作品に度々登場するウサージバ(地主屋敷)の重要性を説明してくれていてタメになった。とはいえ、他作家との比較や作品の分解の仕方に読み方を変えてくれるような鋭さや深みがなくて残念。短い文章で生の深淵に達しようとする作品群の魅力を語る言葉はもっとあるはず。2016/05/16
くす
0
図書館にて。「学生」という短いテキストから講義を行なっていくが、チェーホフの他作品やドストエフスキーなどとの比較も含むため読むには骨が折れた。チェーホフの他の短編などとの比較を通じて特徴を集め、ロシア文学の中における特徴を見出そうとする。初学者向けかと思い手に取ったがなかなか読みにくい文章だった。印象的なのは風景描写や主体と受動、ロシアの自然環境などに関する指摘である。土地が広大なロシアだからこそ孤独や永遠への一体などの方向へ意識が向かうようだ。2022/02/08