出版社内容情報
英国の劇作家ハロルド・ピンターは代表作『誕生日パーティー』が
興行的不振のために、早々と打ち切られるなど
正当な評価を得ることができていなかったが、
1960年初演『管理人』の成功によって一躍注目を集め、
65年初演の名作『帰郷』によって不動の名声を確立した。
80年初演の『温室』以降は、国際社会における人権侵害や弾圧などに
対して積極的に発言をするようになり、活動家として様々な問題に
コミットしつつ、幾つもの優れた政治劇を世に送り出した。
96年初演の『灰から灰へ』は、後期における彼の代表作である。
本書は、第一章で、言語に関わるピンターの問題意識を考察し、
続く第二章では、彼の作品群に描かれるミスコミュニケーション、
あるいは社会学者クラウス・ミューラーが
「歪曲されたコミュニケーション」と名づけたものの表象を分析し、
それらに表出する記憶の政治学のあり方を読み解いた。
第二部をなす三つの章も、多くの点でこの第一部の議論を引き継ぐもの
であるが、ここでは第一部で提示した読解から零れ落ちてしまった論点
をも拾い上げながら、『誕生日パーティー』『温室』『管理人』『帰郷』、
そして後期の政治劇といった彼の代表作を詳細に検討していく。
第一部におけるミスコミュニケーションに関する議論、第二部における
ピンター劇の暴力性に関わる議論、そして本書全体に通底する
記憶の政治学というテーゼは、いずれも「ホロコースト」という
歴史上の大事件と多かれ少なかれ関係しているのである。
【目次】
1章 ホロコーストのあとで(1)
2章 ホロコーストのあとで(2)
3章 死産するスタンリーと声の剥奪
4章 何かが起こる/何も起きない
5章 言語、政治、記憶
内容説明
「記憶の政治学」というテーゼ。劇作家ピンターにとっては「ホロコースト」という問題がきわめて大きく関係しているのだった。「言語」に関わるピンターの問題意識を考察し、彼の作品に描かれたミスコミュニケーション、あるいは「歪曲されたコミュニケーション」と名付けられた表象を分析し、それらに表出する記憶の政治学のあり方を深く鋭く読み解く。
目次
第1部(ホロコーストのあとで(1)―言語、政治、記憶
ホロコーストのあとで(2)―ピンター劇と歪曲されたコミュニケーション)
第2部(死産するスタンリーと声の剥奪―『誕生日パーティ』から後期政治劇へ;何かが起こる/何も起きない―『温室』の再発見と風刺的イメージ;言語、政治、記憶―『管理人』と『帰郷』における禁忌の問題)
著者等紹介
奥畑豊[オクハタユタカ]
1990年生まれ。日本女子大学文学部英文学科専任講師。慶應義塾大学文学部卒。東京大学大学院総合文化研究科修士課程修了。ロンドン大学バークベック校大学院博士課程修了(PhD)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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