出版社内容情報
ダートムア再訪はわたしにとってある意味で「帰郷」と
言っていいほどの意味を持っていた。
しかし同時に頭のなかを吹き抜ける風にあおられながら、
自分のほつれた感情にまつわる映像の断片がぐるぐると
回転するのをわたしはいくぶんうとましくも感じていた。
だれか故郷を思わざる。
だがわたしの「故郷」はつねに現実の郷里とは別のところにある
としか感じられない。
ダートムアへの「帰郷」とは確かに日本に生まれた日本人として
いかにも場違いな言い方ではあろう。
あるいは、いっそそれこそ
通俗的な観光客の心理にすぎないと言うべきなのかもしれない。
つまりそれはトポグラフィカル・スノビズムであろう。
いや言い換えればそれらの土地の景観を目の当たりにして、
ほとんどそのつどデジャヴュつまり既視感と呼ばれるあの疎隔の感じ
と懐かしさとの混交した不思議な「感覚」。
この不思議な感覚を追究すべく6篇のエセーが紡がれたのであった。
内容説明
「根源」をめぐる旅に終わりはない。6年ぶりのダートムア再訪。それは「帰郷」と言っていいほどの意味を持っていた。吹き抜ける風にあおられ、ほつれた感情にまつわる映像の断片がぐるぐると回転する。旅および紀行本の第8弾。
目次
蜃気楼
光陰
満州記憶
二人の大尉の死
レバノンの岩山
ダートムアに雪の降る
著者等紹介
立野正裕[タテノマサヒロ]
1947年福岡県生まれ。岩手県立遠野高校卒業後、明治大学文学部入学。明治大学大学院文学研究科修士課程修了。英米文学と西洋文化史を研究。「道の精神史」を構想し、ヨーロッパへの旅を重ねる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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