内容説明
辺境のキリスト教とは?「文明の十字路」に育まれたもう一つのキリスト教。デヴィルズ・ドーズンと呼びうる12枚の写真が成立する過程―20年の歳月をかけた現地調査の姿―を復元する異色の紀行。砂漠の中、山岳の中腹…、多くの民が乗り捨てた夥しい数の“石の箱船”が座礁したまま残された東アナトリアの知られざる風土と建築物。そしてそこに住む人びと…。カラー図版多数掲載!
目次
エレルーク
オズン
リプシメ
ガルナホヴィット
マルマシェン
エレヴァン
ターリン
マスタラ
アフタラ
タテヴ
デイル・マル・ムーサ
エリセ・アラキャリヴァンク
エレヴァンの生鮮食品市場で
著者等紹介
篠野志郎[ササノシロウ]
1949年山口生まれ。1974年東京工業大学大学院工学研究科建築学専攻修士課程修了。現在、東京工業大学名誉教授。工学博士(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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みーまりぽん
11
4~6世紀のシリアを始めとし、その後のトルコ、アルメニア、ジョージアに夥しく残るキリスト教遺構を、建築形式の系統化や発展の系譜の関連付け・明確化を目的として、1998~2000年の一次調査から約20年間にわたり訪れ続けた旅の記録。肝心な建築学的記述は自分にはチンプンカンプンですが、登場人物紹介ページが在るように「作家」「飛ばし屋」「博物館長」などとの濃密な付合いを記した紀行文的部分が多いので愉しく読めた。スナップ写真とか欲しくなる(笑) 各章扉に選ばれた1枚の写真へと至る道筋を辿る歴史と記憶と思考の迷宮。2020/04/19
ろべると
9
旧ソ連の国々のひとつであり、トルコやイラン、アゼルバイジャンとジョージアに囲まれたアルメニアは、世界で一番早くキリスト教を国教にした国で、古い教会の遺構が各地に遺されている。日本人研究者の著者は20年以上前からアルメニア建築を調査しているが、厚い雲に覆われた荒野に建つ忘れ去られた教会の姿が胸を打つ。それは周辺国家の度重なる支配を受け翻弄されてきた同国の歴史と、今も続く戦乱と有能な人材の国外流出で疲弊した現在を象徴しているかのようだ。以前に聴いたアルメニア民謡の物悲しい旋律の記憶が蘇り、胸に沁みてくる。2023/11/02