内容説明
カナダに生きる日系人家族三世代の女たち。日本語しか話さない祖母ナオエと、祖母の言葉がわからない孫娘ミュリエル(ムラサキ)。二人が時空を超えて語り出す―マジックリアリズムの手法で描く、日系移民のアイデンティティと家族の物語。コモンウェルス処女作賞・加日文学賞を受賞した「日系移民文学」の傑作!
著者等紹介
ゴトー,ヒロミ[ゴトー,ヒロミ] [Goto,Hiromi]
1966年千葉県に生まれる。3歳になる直前に家族とともにカナダに移住。カルガリー大学英文科卒業。バンクーバー在住。1994年、カナダで生きる日系人家族を描いた『コーラス・オブ・マッシュルーム』でデビューし、コモンウェルス処女作賞および加日文学賞を受賞。第2作The Kappa Child(2001)でジェイムズ・ティプトリー・ジュニア賞を受賞
増谷松樹[マスタニマツキ]
翻訳家。1946年横浜に生まれる。慶應義塾大学仏文科卒業、1976年にカナダに移住。三児の父親。詩人の故ロイ・キヨオカ氏を通じて、多くの日系カナダ人作家、アーティストと交流する。2002年、同氏の『カナダに渡った侍の娘―ある日系一世の回想』の翻訳を草思社より刊行。また、日系カナダ人の和文文献、木村岸三『日系人所有漁船処分顛末覚書』等の英訳にも協力(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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スターライト
6
娘夫婦に連れられて日本からカナダにやってきたオバアチャン、清川直恵(キヨカワ・ナオエ)はよくしゃべる。しかもカナダに溶け込もうと英語で話すのではなく、日本語で。彼女の話を聞いた孫娘ムラサキ(ミュリエル)が書いたという体裁を取りながら、ムラサキ自身の物語も展開する。オバアチャンの話はたいてい日本の昔話だが、一寸法師が普通サイズに”巨大化”して傲慢な振る舞いに及んだり(!)、姥捨て山の悲惨な話がたくましく生きる老婆の話になったりと奇想天外。ムラサキの苦悩と成長に、移民者の立場が浮き彫りにされている。2024/05/16
ぱせり
3
相手をねじ伏せようと闘い続けている母と娘。母と子の闘いというよりも、一人の移民のなかにある二つの言語・文化とのせめぎ合いのようにも感じられる。言葉の通じない祖母と孫を繋ぐ昔話は二つの根をより合わせていくよう。家ってなんだろう。家は昔話のようだ。2023/07/21
ばにらん
1
一寸法師のその後の話と姥捨山の話の力強さに度肝を抜かれる。言語と人種と家族と物語を語ることの話。2015/09/05
つゆり
0
おばちゃんの強さが元気をくれる。 血のつながりの不思議さがあった。2018/02/25