内容説明
偉大なる父・北斎を支え、その影として生きる娘。父への愛と、自らの筆に込められた渇望…。葛飾応為に魅せられたカナダ人女性作家が5年に及ぶ調査を元に浮世絵に秘められた真実の物語を描き出す歴史フィクション。
著者等紹介
ゴヴィエ,キャサリン[ゴヴィエ,キャサリン] [Govier,Katherine]
カナダの作家。元ペン・カナダ会長。Canada’s Marian Engel Award for a woman writer(1997)、Toronto Book Award(1992)を受賞。2003年、代表作Creationがニューヨークタイムズ紙ノータブル・ブックの1冊に選ばれた
モーゲンスタン陽子[モーゲンスタンヨウコ]
作家・翻訳家。東京都出身。主に、カナダ、アメリカで執筆活動を行っている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
らむれ
77
飯が炊けないと女のくせに、絵が上手くても女のくせに。お栄にとっては相性の悪い時代だった。そんな中でももがいて粋に生きようとするお栄は魅力的。なにより、大好きなお父さんと一緒に歩めたことが何よりの幸せだったんだろうな。実際、どのくらい彼女に独立欲があったのかはわからない。ジェンダーやフェミに絡めてしまうのは現代人の性なので。でも、少なくとも本の中での彼女は悔いのないぐらい存分に個性的に生き切っていて清々しい。お栄との心的距離は縮まらなかったけど、かえって一枚の絵を外から眺めているような気分で良かった。2015/09/09
真理そら
70
『北斎娘・応為栄女集(久保田一洋)』で図版を参考にしながら読んだ。オリジナルキャラの志乃と講談師・優行がお栄という人物の生涯を描くのに効果的だ。北斎の作品には応為作のものもかなり混じっているという発想から書かれていて、応為が女であったことに注目して話が進んでいく。けれど日本画の世界では土佐派狩野派の時代から粉本を使った工房システムで作品を使っていて酒井抱一なども本人作ではなくても酒井抱一の名前で残っているので弟子の作品が師の名前で発表されても当時は違和感がなかったのだろうと思う。(続く)2021/03/15
ロドリゲス
37
まさに応為は北斎の一部であったのだろう。 『吉原格子先之図』をはじめ、改めて美術館に足を運んでみたくなった。 応為だけでなく、北斎の浮世絵も感じ方が違って見えるだろう。 カナダ人女性作家の綿密な取材と素晴らしい翻訳のおかげでとても読みやすかったです。 ★★★★★ 2019/08/27
りつこ
37
面白かった!真実に近づこうと様々な方面からアプローチし調べあげた作者の情熱に恐れ入るが、それよりもなによりも物語としてすこぶるおもしろく、登場人物がみな生き生きしていて跳ね回っていること、時代の空気を巧みに描き出していることに驚く。とても不自由な世界にいながら絵を描いているときは自由で、いろんなものに縛られ報いられないのに不幸ではなくて、蔑ろにされながらも誇りを失わない。これを読んだら栄のことをすきにならないではいられない。今まで興味のなかった世界だけれどもっと知りたくなった。2015/02/20
onasu
29
上巻は期待に沿わなかったけど、下巻は幾分よかったか。 あとがきにある通り、著者が浮世絵そのものもさることながら、沢山の資料や人にもあたられて執筆されたことは分かりますが、これに限らず翻訳ものにはどうにも違和感を禁じえないのと相まって、終始好みではありませんでした。 とは言え、お栄の生涯を小説で読んだのは初めてなので、そこには感謝したい。 あとは訪れたいリスト:川崎の砂子(イサゴ)の里資料館、小布施の北斎館、松本の日本浮世絵博物館、愛知小牧のメナード美術館、栃木那珂川の馬頭広重美術館2014/10/02