出版社内容情報
ジョージ・エリオット[ジョージ エリオット]
著・文・その他
植松 みどり[ウエマツミドリ]
翻訳
内容説明
希望をすべて、うち捨てることさえできたなら。19世紀英国の田園地帯。少女マギーの安穏な生活は、父の裁判敗訴を引き金に、もろくも崩れ去ってゆく。復讐に燃える兄と宿敵の息子への恋慕の狭間で、少女の心は激しく揺れ動き、そしてまた、いとこの恋人との許されざる愛に苦悩する。
著者等紹介
植松みどり[ウエマツミドリ]
1970年、津田塾大学大学院博士課程満期単位取得退学。和洋女子大学名誉教授。日本ジョージ・エリオット協会会長を経て現顧問。日本ジェイン・オースティン協会理事。日本文藝家協会会員。イギリス女性史研究会会員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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まふ
115
英国中流地主家庭の没落と再興、一家の奮闘と恋の物語。水車場を所有していたタリヴァー氏が訴訟に敗れて破産宣告を受ける。その息子トムが再興を目指す一方で妹のマギーが訴訟の勝者である相手方の息子のフィリップと恋仲になるも、新たに現れた好青年スティーヴンに愛の告白を受けて苦しむ。ところが物語はほとんど唐突に悲劇で終わる。「え、どういうこっちゃ」感の強い終局。この終わり方に発表以来、種々疑問が投げかけられているようであるが、折角の「名作的」充実感のある内容だっただけに残念な終わり方だった。G505/1000。 2024/05/08
ソングライン
23
フロム河畔で製粉業を営む裕福な家庭に暮らすトムとマギーの兄妹、しかし父が水利権の訴訟に負け、財産を奪われ没落、失意のうちに亡くなります。裁判の相手ウェイカムに復讐を誓うトムと幼い時の負傷により背骨の曲がるも優れた英知を持つウェイカムの息子フィリップを慕うマギー。大人になったマギーに魅かれる従妹ルーシーの婚約者スティーブンの許されない求婚に悩むマギー。人は自分の愛、富のために大切な人への思いやり、記憶を犠牲にしてよいのか。悩むマギーに訪れる余りにも悲しい平穏、ジョージ・エリオットの傑作にただ感動です。2023/05/10
Э0!P!
3
ジョージ・エリオットのおそらく一番の傑作と思われる。ユリシーズ的なストーリーで神話的なのだが、マギーという優秀な女性が、家父長制ゴリゴリのヨーロッパにおいて個人の解放を目指すという点で近代を感じる。シェークスピアを思わせる愛憎劇、身体障害者の苦悩、巨大質量で押し寄せる自然の脅威と要素てんこ盛りであり、うねるような激流の中に迸る感情の渦がこれ以上になく丁寧に描写されている。2024/01/24