内容説明
イェイツが築こうとした「アイルランド」との絆。―独自に「アイリッシュ・フォークロア」の収集を行ない、生涯、「フォークロア」に強い関心を抱きつづけたイェイツ―イェイツをとおして独自の変容をとげた「フォークロア」を作品から拾い上げ、その創作活動と「アイリッシュ・フォークロア」の関係を明らかにし、歴史に翻弄されたイェイツの内面世界に迫る。
目次
序章 フォークロアとイェイツ
第1章 イェイツの生涯を貫くフォークロア―その政治的背景
第2章 対立を越えて―劇詩『オシーンの放浪』が予見するナショナリズムの行方
第3章 めぐりくる昼と夜―詩集『葦間の風』と太陽シンボリズム
第4章 ハープの力―劇詩『影なる海』とイェイツのナショナリズムへの不安
第5章 物語の力―狂言喜劇『役者女王』と革命のフォークロア
第6章 アイルランドの物語の再構築―「クレージー・ジェーンの歌」と独立後のアイルランド
終章 アイルランド文学とフォークロア
著者等紹介
池田寛子[イケダヒロコ]
ユニヴァーシティ・カレッジ・ダブリン(修士)。京都大学大学院人間・環境学研究科(博士)。現在、広島市立大学国際学部准教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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のれん
9
著者による英語論文の翻訳集。 アイルランドというかけ離れた国の文学者とそのナショナリズムについて論じた論文を、日本語で出版した業績をまず称えたい。 ただ知らない方に紹介するという形ではなく、少なくともアイルランド文学についてアマチュアレベルで知っていることを前提にしている文章だから、ますます読む人を限定にするだろう。 だが、文字化される口承文学から始まるあらゆる矛盾と凋落を抱えるアイルランド文学の美学、即ち改変され弱っていき、それでも戦い皮肉な結末を迎えるその姿。『判官贔屓』好きとしてはたまらない紹介だ。2020/08/01