出版社内容情報
“創られた神話”を解体し、原爆使用の真相に迫る。論争的なトルーマンの背後に潜む理由を分析し、指導者達に知られていたこと、知らなかったことを描きながら、米ソ関係および米国内政治の役割を検討。日本降伏にも新視点。
内容説明
“創られた神話”を解体。未だ正解のない「原爆使用」の“真相”に迫る。
目次
第1章 二者択一の選択か
第2章 これまで知られた中でもっとも恐ろしい兵器
第3章 勝利への展望、一九四五年六月
第4章 勝利への道
第5章 トルーマンとポツダムでの爆弾
第6章 ヒロシマとナガサキ
第7章 歴史におけるヒロシマ
年表―太平洋戦争に関連した一九四五年の重要な出来事
著者等紹介
ウォーカー,J.サミュエル[ウォーカー,J.サミュエル][Walker,J.Samuel]
ウォーカーは、メリーランド大学大学院Ph.D.(アメリカ史)、現在は合衆国原子力規制委員会に所属する歴史研究者。主要著作、Henry A.Wallace and American Foreign Policy(Westport:Greenwood Press,1976)、その他原子力規制関係の著書や論文多数
林義勝[ハヤシヨシカツ]
カリフォルニア大学大学院サンタバーバラ校Ph.D.アメリカ外交史専攻。現在、明治大学文学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ネコ虎
6
トルーマンが原爆投下決断までの経緯や背景、関係者の動き等を丁寧に描いていく。一番のポイントは原爆が使用されず、日本本土進攻がなくても戦争は早晩終結すると考えていたトルーマンが、なぜ原爆投下を延期しなかったのかの要因分析だ。①早期戦争終結による人的被害最小化②原爆開発の努力と費用の正当化(議会対策)③ソ連との外交上優位性確保④原爆不使用の動機欠如(倫理感欠如)⑤日本への憎悪と復讐心(人種偏見)の5つを挙げる。米国政府の公式見解は①早期戦争終結による100万人と言われる人的被害最小化だが(続く)2016/05/09
ZEPPELIN
5
本当に原爆投下は「数十万のアメリカ兵士を救うため、または戦争の早期終結のために必要」だったのか。著者はイエスでありノーでもあるという。もちろん過去の話であり正解などないのだけれど、アメリカにおける原爆投下は妥当だという神話が作られた過程がよく分かる。個人的には「原爆を使用しないという動機の欠如」というのが一番しっくりくる。ただ、仮に原爆は不要だったとしても、アメリカは口が裂けてもそれは言わない。言うわけがない。そのことも痛いほどよく分かる一冊2014/09/05
sekaisi
4
ポツダム宣言が無視されたので原爆を使う。2020/04/21
ワッキー提督
2
表題のことについて読みやすい一冊。原爆投下によって「救われた」米兵の数について、アメリカにおいて「神話」を形成している伝統的な見解を批判しつつ、あくまで対ソ外交は副次的な課題であったとして、「修正主義」の見解に完全には立たない議論を展開する。 著者の「神話」に対する解説的な見解を読むと、この問題に限らず、歴史的事件の「原因」というものがいかに複雑で、であるがゆえに単純な「神話」が形成されてしまうのかということについて、考えさせられた。2025/01/08
マイケル
1
本書に、ルーズベルトの死後、急遽大統領に就任したトルーマンが、非常に重要な「マンハッタン計画」の報告書をろくに読まなかったと書いてあります。たぶん理解出来ないと思ったからではないでしょうか。原爆投下による放射能が人間を含むあらゆる生物にどのような結果をもたらすかを、彼がちゃんと理解していたとは思えません。オリバー・ストーンも指摘していますが、そのような人間に決定権を与えた不幸。2018/07/03