出版社内容情報
ナショナリズムと多民族化のベクトルが交錯し、英仏語がせめぎ合い、移民出自の言語と文化の”三角構造”が現出しているモントリオールにおける、新しい文学の地平の可能性。
内容説明
ナショナリズムと多民族化のベクトルが交錯し、文化的変容とアイデンティティの新構築を見せるカナダ・ケベックからの発信。フランス語、英語の二言語がせめぎ合うモントリオールでは、移民が出自の言語を保持する確率が高く、第三の言語と文化が絡み合う、いわゆる文化の“三角構造”が現出している。そうした横断文化的な状況のなか、活力を失わないマイノリティと脅かされたマジョリティとが連帯し新たなコスモポリタニズムを模索している。フランス語で活発な創作活動を展開し、トランスカルチュラルな状況を映しとり、新たなアイデンティティを求める移民作家たち。かつての移民文学の域を超えて、グローバル化のなかで新しい地平をめざすケベックにおける「移動文学」の現状と展望。
目次
第1部 都市・移民・文学―モントリオールとマイノリティ(イタリア系移民文学が映すトランスカルチュラリズムとアイデンティティの変容―ミコーネ三部作とスピーク・ファット論争にそいながら;モントリオールのユダヤ系とケベッコワ―歴史的経緯とユダヤ系仏語表現作家N・カタンの作品にそいながら;エミール・オリヴィエとハイチ―記憶がひらく回路と終わりなき流浪 ほか)
第2部 多元社会ケベックと新しいコスモポリタニズムの模索(カナダの多文化主義を超えて―ビスーンダットの多文化主義批判とケベックにおける多文化共同体のゆくえ;自己翻訳文学の波紋と母語神話の崩壊―ナンシー・ヒューストンの『草原讃歌』;多元社会ケベックと国民文学論の陥穽―ラリュ論争から見えてくるもの ほか)
第3部 ガブリエル・ロワ論(ロワにおける異邦人のフィギュール;倫理的自伝文学についての覚え書き―ロワの自伝『あがなえし遙かな時』をめぐって;バイリンガリズムと間のユトピー―ロワ『水鳥』にみられる言語間の文学)
著者等紹介
真田桂子[サナダケイコ]
阪南大学教授。大阪大学文学部卒。カナダ政府奨学生としてモントリオール大学大学院に留学。専門、フランス系カナダ文学、ケベック地域研究、文化研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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