出版社内容情報
今日 マチ子[キョウ マチコ]
著・文・その他
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
佐々陽太朗(K.Tsubota)
88
今日さんによると、「言葉にならないきらめきや揺らぎを、描いていけたらいいなと思います」とのこと。既刊の『センネン画報』と多くは同じものが収録されている。しかし校正も新たに、未収録作品も収められている。なにより嬉しいのは『センネン画報』では一部だけがカラーであったのが、本書ではオールカラーになっていること。眼福である。カーテン、風、靴紐、傘、はさみ、カメラ、付箋、マフラー、そして水。今日マチ子さんの青い世界ふたたび。2019/02/17
吉田あや
70
静寂ながらも雄弁な半透明の季節。青い空に虹色が零れ出すように、暴発しそうな多感さをクールな表面で覆い隠しても、其処此処に滲みだすカラフルな色が時に心地よく、時に棘のように切なく刺さる。純粋で、盲目的で、とても自己中で、時に残酷だったあの時間が、カーテンを膨らませる風のようにふわりと包み込むセンネン画報の抒情詩の世界。零れ落ちるフリスク、埋める真白な用紙のマス目、そよぐ風、甘酸っぱいハイレモンの君。2018/05/16
momogaga
47
図書館本。今回もストーリーを勝手に作って楽しまさせて頂きました。未だに名前を拝見するたびに、大女優の京マチ子さんを思い浮かべてしまう私としては、センネン画報の世界を理解できているのだろうか・・ジェネレーションギャップは仕方ないですね。2018/06/10
ぐうぐう
39
言葉がなくなると、世界はどのように見えるのだろう。どのように感じられるのだろう。それは、例えば風だ。カーテンが、マフラーがそよぐだけで、そこにドラマが生まれることを私達は知る。あるいは、温もり。差し伸べた手に触れたときの、背後から抱きしめられたときの、人の温もり。または、匂い。脱いだ上着の、すいた髪の、相手の匂い。そして、想い。愛おしいという、憧れという、好きでたまらないという、言葉だけでは掬い取れない想い。水の中で交わされる会話が、言葉ではなく、泡になって描写される。まさに、想いがそこに描かれている。2018/06/11
リコリス
32
風にそよぐカーテン、静かな水面のゆらめき、心地よい色合いに浮遊しているように時間がすぎていきました。大人と子供の間の切なくて甘やかで爽やかで眩しい季節。本の中に吸い込まれるような色彩が好みでした。 2018/10/14