内容説明
「見てはいけないもの」はあるのか?バブルに沸く日本で「表現の自由」を拡張したサブカルチャー、その象徴でもある漫画家・根本敬の世界に魅せられた精神科医が、サブカルとともに歩んできた自らの歴史を振り返りながら、90年代「悪趣味」ブームと平成末期に吹き荒れる「ヘイト」を論じ、表現することの未来と自由の可能性を解く。
目次
序章 私にとっての根本敬作品
第1章 不条理論
第2章 精子論
第3章 差別論
第4章 『ディープ・コリア』論争2018
第5章 なぜ「ゲルニカ計画」だったのか
著者等紹介
香山リカ[カヤマリカ]
1960(昭和35)年、北海道生まれ。東京医科大学卒業。精神科医、立教大学現代心理学部映像身体学科教授。豊富な臨床経験を活かし、現代人の心の問題を中心に、政治・社会評論、サブカルチャー批評など幅広いジャンルで活躍、さまざまなメディアで発言を続けている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
阿部義彦
21
これは大変刺激的で示唆に富んだ根本敬論であり、時評でもあります。高校時代の友達が根本敬のマンガを良く買っていて、そいつの家でいくらかは読んだ記憶があります。どっちかと言うと私は因果者関係のエッセイなどの文章のファンで「因果鉄道」や、「電波系」「解毒波止場」等を読んでました。冒頭の「でも、やるんだよ!」はもう、お約束ですね。「タケオの世界」は読んだことが無かったのでその内容には唖然としました。精子が人間の形をとりタケオと言う記名性を失って、単なる精子に戻り子宮に帰っていくなんて。人間はここまで歪んでいる。2019/03/25
gtn
20
根本敬の作中人物、村田藤吉はなぜ理不尽な目に合わなければならないのか。著者はミルトン・フリードマンの「不公平論」も用いるが、説明できるわけがない。著者が幸せなのは、根本氏が何かを啓蒙しようとしていると勘違いしているところ。根本氏は単に人間の欲望のドロドロしたものをあからさまにしたいだけなのに。しかし、そのメッセージ性は強い。著者を虜にしたり、自死したある女性漫画家が根本氏の作品に傾倒したことからも分かる。2020/06/07
garth
20
「私は、自分が在特会のヘイトデモさえ笑ってしまったこと、つまりサブカルとして消費しようとしたことを、ずっと恥ずかしく思って後悔している。そしてそれは私の中で、「サブカルは結局、すべてをまず“笑う”ことで世の中の本質を見抜く目を曇らせるのではないか」と、サブカルに対する評価、もっと言えば80年代文化を生き続けているような自分への評価を、大きく下げることにもつながっていた。2019/03/25
サイバーパンツ
15
『コミックメディア』の根本論、『ポケットは80年代がいっぱい』を現代へ照らし合わせて通史的に整理。80年代的相対主義の延長にある何でもネタ扱いし、上も下も表現の場に引きずり出した悪趣味サブカルチャーが現在のヘイトに重なることを認めながらも、それでも当時の文化とそれを愛した自分は否定できないと、根本敬の作品やディープ・コリア論争などを参照しつつ苦悩する。ネトウヨというおもちゃで遊んだ結果、多数のヘイト垢を凍結に追い込んだなんJ民の凍結祭りにサブカルの希望を見る締めは良いと思うが少しシュール。2019/03/19
templecity
6
香山リカと根本敬のコラボ作品だが、根本の作品がとても衝撃的、不幸の循環から抜け出せないような気分になる。香山も職業柄、不幸な人生の患者と接する機会が多いが、犯罪は貧困や不幸から生まれるというのも分かる。谷垣が法務大臣だった時に8人の死刑執行に署名したが、犯罪は憎むべきことだが、犯人が如何に不幸だったことも悔やまれると述べていることからも分かる。2004年に個人情報保護法が出来たのだが、それまではエログロ、個人情報バラマキの著作物を見ても何とも思わなかった時代があった。(続きあり)2019/07/10
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