出版社内容情報
大竹 弘二[オオタケ コウジ]
著・文・その他
内容説明
公開された情報そのものの真偽がわからなくなり、「ポスト真実」に政治が翻弄される現代。公開性とは何か。近代国家、近代政治の起源にまで遡り、今日における政治危機の本質を解明する。
目次
序論 前室の権力
第1部 例外状態としての近代―秘密と陰謀の政治学(主権vs統治;政治における秘密;陰謀、時間政治、コミュニケーションの秘密;例外状態と国家理性;偽装と隠蔽のバロック)
第2部 主権者の憂鬱―代表的公共性の影と光(情念を統治する;バロック主権者の悲劇;バロック主権者の栄光;代表と民主主義)
第3部 社会国家とその不安―官僚と非行者(書記の生、文書の世界;フランツ・カフカ、生権力の実務家;スパイ、ゲーム、秘密の戦争;統治の彼方の政治)
補論 統治vsポピュリズム?
著者等紹介
大竹弘二[オオタケコウジ]
南山大学国際教養学部准教授。専門は現代ドイツ政治理論、政治思想史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
34
18
シュミットは主権を例外状態において決定することと定義した。アガンベンはそれを踏まえて、今日の政治の触を、常態化した例外状態として捉えた。それは、法規範に対する執行権の恒常的な優越を意味している。今日の執行権の優越を常態化した例外状態と捉えるなら、例外状態は、執行権が本来有する傾向の所産ともいえる。近代の主権理論は16世紀の宗教紛争に対処するために生まれ、18世紀には「統治性」の研究にとって代わられた。統治の限界に生まれた主権概念は、今日では統計的数値と化し、スクリーンに上映可能なものとなっている。2019/05/22
ぷほは
3
本物の言説分析と比べると薄味なのは否めないが、読み物としては十二分に楽しめた。バートルビーからカフカ論、そしてスパイ小説への件はやや社会学的すぎるきらいがあるにせよ、バロック期の宮廷陰謀劇、アルカナ・インペリィ(国家機密)をめぐるゼマンティク分析はなかなかスリリングで、知らない人名や歴史的事実が西欧から中欧、東欧の時空を駆け抜けるスピード感も相まって、これを人文知と言わず何と言うか、という気合の入った文面。ウェーバーの心情倫理/責任倫理の話が出ないのは、日本の現実政治の諸問題を注意深く避けているからかな?2018/05/19
読書の鬼-ヤンマ
0
2018年4月30日初版第1刷、図書館本。大竹弘二氏、3冊目。良書。俗受けしない本書は一読の価値あり。P23:近年、各国で高まっているポピュリズム現象は、いまや世界に不安定性をもたらす最大の懸念材料の一つとなっている。現代の政治的危機の多くが民主主義の欠陥に帰せられている。つまり、疑われいるのは民主主義の「統治能力」なのである。”無責任な民衆”の支配が、統治を危機に陥れる。この現象は、極めて古典的な問題であり、今日の政治情勢の中で再び浮上してきている。民主的な意思決定と安定的な統治は、果たして両立するか?2024/01/28
c86
0
これだけ幅広い領域を横断しながらすっきりまとまっている良著 書名は『公開性の根源』というより『アルカナ・インペリイの根源』とした方が適切(だし、かっこいい)とか思ったが、それだと一般層への訴求力が低いとの判断があったのだろう。
zk
0
凄い。前半の系譜学的なアルカナ論は勿論のこと、個人的にはメルヴィル論が非常に示唆的だった。「歴史性と理論の融合」がここまで高い水準で果たされているのは、筆者が碩学だからという一点に尽きると思う。付箋を貼りまくった…2020/05/03