出版社内容情報
山本 貴光[ヤマモト タカミツ]
吉川 浩満[ヨシカワ ヒロミツ]
内容説明
頭がよくなる?脳が心を決める?「パラドックス」と「カテゴリー・ミステイク」をキーワードに、「脳情報のトリック」をみきわめよう!脳科学と哲学にまたがる、見晴らしのよい・親切で本質的な心脳問題マップ。脳研究小史、脳と心を考える際の必読ブックガイド付き。
目次
第1章 脳情報のトリック―カテゴリー・ミステイクとパラドックス
第2章 心脳問題の見取図―ジレンマと四つの立場
第3章 心脳問題の核心―アンチノミーと回帰する疑似問題
第4章 心脳問題と社会―社会と科学、そして生
終章 持続と生―生成する世界へ
補章 心脳問題のその後
著者等紹介
山本貴光[ヤマモトタカミツ]
1971年生まれ。慶應義塾大学環境情報学部卒業。コーエーでのゲーム制作を経て、文筆家・ゲーム作家。「哲学の劇場」主宰
吉川浩満[ヨシカワヒロミツ]
1972年生まれ。慶應義塾大学総合政策学部卒業。国書刊行会、ヤフーを経て、文筆業。「哲学の劇場」主宰(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ころこ
40
いわゆる「心の哲学」、「心脳問題」を分かり易く扱った本です。著者の語り掛けが迂遠で、その迂遠さに本書の意味があるのでしょう。内容は、少しネットで調べると出てくるものばかりで、「この本ではここまでしか行かないの?」となります。見方を変えると、脳科学者、哲学者が難しい言葉や理論を使って論じても、そこまでしか行かないのだということを理解するということが大事だということになります。人間が何かを理解することがどういうことかということを考えれば、どれだけ脳科学の知見が増えても、必ず哲学的アプローチが必要になります。2019/07/24
ころこ
35
恐らくこの問題が分からないのは、客体としての脳の身近にあるのは観察者の脳でもあり、定義上観察者は客体(外観)としての心を知り得ず、主体的(内観)な心との混同から生じていることにあるのではないかと思います。これは本書後半にある著者が翻訳したサール『MiND』の説明に合致しています。このことを確かに「カテゴリーミステイク」だということも出来ますが、前半の説明ではこうはいっておらず、一貫性の無さが説得力に欠けるとの印象を与えているのかも知れません。ところで、本書の前半に脱線で書いてあるのですが、脳科学の注目のさ2021/04/09
禿童子
32
とても含蓄が豊かな本で、主題を離れても教養を高める手引きになる。カントの第三アンチノミーというと何やら難しそうだが、「世界は自然法則に還元できない。自由が存在する」という正命題と、「世界は自然法則に還元できる。自由は存在しない」という反対命題が同時に成立する二律背反状態のこと。前者を「日常経験」、後者を「科学」と見立てて、心脳問題をカテゴリーエラーの「疑似問題」として解決ではなく「解消する」のが本書の基本的立場らしい。カントやベルグソンまで持ち出すのは驚きだが、錯綜する議論を整理するのに有用な本でした。2019/08/09
koke
12
心脳問題の入門書というイメージ通りだったのは3章まで。4章では、脳科学の進歩がコントロール型生政治の全面化と政治的思考の脱落という事態につながっていることを指摘する。終章では、一般性をもつ科学では記述できない持続と特異性を論じる。科学者ではない私たちが、「週末の科学者」の放言を真に受けず、世の中の脳中心主義にも染まらないための知恵が色々詰まっている。2023/11/25
ミズグ
10
この本は難問だけあずけられて解決編がない探偵小説のようなものだ。スッキリとした気分を得るには不似合いだが、答えを求められる日々から少しだけ自由にしてくれる旅である。2016/09/06