内容説明
終わりなき危機からどう離脱するのか!?出口の見えないデフレ、相次ぐ国家財政破綻、連続する経済危機…。資本主義のかつてない変化を解き明かし、未来の経済を構想する。
目次
第1章 資本主義の大転換(ケインズの予言と利子率革命―なぜ、利子生活者は安楽死しなかったのか?;ポスト近代の『リヴァイアサン』のために―「長い二一世紀」に進行する四つの革命と脱近代の条件)
第2章 解体する中産階級とグローバリゼーション(グローバル・インバランスとドル;不可逆的なグローバル化と二極化構造―日本「輸出株式会社」の危機と知識の組み替え;「バブル崩壊の物語」の二五年間)
第3章 歴史の大転換にどう立ち向かうか(「歴史における危機」とは何か―9・11、9・15、3・11をつらぬくもの)
著者等紹介
水野和夫[ミズノカズオ]
埼玉大学大学院経済科学研究科客員教授。1953年生まれ。77年早稲田大学政治経済学部卒業。80年早稲田大学大学院経済学研究科修士課程修了。八千代証券(現・三菱UFJモルガン・スタンレー証券)入社。98年金融市場調査部長。2000年執行役員。02年理事・チーフエコノミスト。05年参与・チーフエコノミスト。10年三菱UFJモルガン・スタンレー証券退社(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Miyoshi Hirotaka
34
16世紀、金利の下降局面で戦争が多発した現象が観測されている。国内の投資先が飽和し、収益が低下し、各国がリスクの高い行動に出たからだ。喜望峰航路の発見により、フロンティアが拡大。それから21世紀までの成長は、海の経済圏拡大の延長線上にある。一方、20世紀から新興国が先進国に対し力を持ち始め、金融経済が実体経済に対し猛威を振るい、資本が労働に対し優位になり格差が拡大した。16世紀から続いたビジネスモデルが破綻に向っている兆候が観察される。成長が続いているうちに次の数世紀にふさわしい社会モデルを模索すべきだ。2017/05/28
カイロス時間
10
示されている計算や指標が経済学的に正しいのか、素人ゆえ判断できない。しかし、世界に成長の余地がなくなってきていることは日々生活している中でも感じる。というか、有限の世界で無限に成長するのが不可能なことは誰にも明らかだろう。その限りで著者の主張は間違いではないと思うし、議論の方向性には賛成する。どこかほかで読んだ意見かもしれないが、大切なのは資本主義に対して単純に「反」や「脱」という態度をとることではなく、そのオルタナティブを考えていく姿勢なのだろう。戦いは必要かもしれないけれど、戦闘的になる必要はない。2020/04/22
かも
9
★★★★☆著者の予想に同意するかは別にして、大きな視点から経済を見る意識を持たせてくれる良著。中世から近代への転換点となった様々な出来事と、現在起きている出来事の共通性を論じて、今まさに近代から次の時代への過渡期にあると論じている。成長余地減少による利子率革命、利益減少を周辺に押し付ける賃金革命など、16世紀との類似は興味深い。はたして911同時多発テロ、915リーマンショック、311福島原発事故は膨張・成長をベースとする近代への警笛なのか。次の時代は何の時代になるのだろうか、と考えさせられる。2020/06/03
T坊主
8
1)今歴史は近代という時代が限界を迎えることによって、生じている必然的な危機の始まりに来ている。2)私達の社会は”貴族社会”から”武士社会”に移行したような抜本的な仕組みの変更が求められている。3)欧州危機はドイツがすべて被って”ドイツ帝国”になるしかない。4)これからは成長を追い求めるのではなく、定常になる、中世そうだった。5)当分の間①新興国の先進国に対する優位 ②金融経済の実態経済に対する優位 ③資本の労働に対する優位。6)成長という概念を捨てた新社会システムの構築を日本は急がねばならない2013/05/14
ひかりパパ
7
同氏の「資本主義の終焉と歴史の危機」(集英社新書)より前に書かれたもので、重複する部分あり。しかしながらこの本は一読の価値あり。いよいよ資本主義は限界に到達し、大きな転換が求められていることを著者独自の歴史認識で展開。今アメリカでブームのピケティの「21世紀の資本論」と合わせて考えてみるとマルクス主義経済学者でなく、近代経済学の立場の論者からの議論が目立つ。資本主義の終焉が多くの人々の関心事となってきたと言える。2%以下の超低金利が長期間続く利子率革命により、1974年をピークに低成長時代へ。(続く)2014/12/05