内容説明
1967年公開のドキュメンタリー『夜明けの国』をいま鑑賞しなおすことで、日本で消されてしまった「中国の60年代」を考えるとともに、この映画を見た竹内好と「日本の60年代」をも考える。戦後ドキュメンタリー論、表象文化論、ゴダール論、大陸の文化大革命研究最新論文も収録。今だからこそできた多元的アプローチ。
目次
第1部 見ながら考える(なぜいま『夜明けの国』を見るのか;『夜明けの国』を読み解く―映像・場・歴史;『夜明けの国』がつくられた時代―一九六〇年代のドキュメンタリー)
第2部 見たあとで考える(舌のない人間の様に―撫順炭鉱での沈黙;不実な鏡―『中国女』と『夜明けの国』の受容をめぐって;中国人の文革観;教育革命いまだ成らず;紅衛兵の「歩み」について―全共闘と文革)
『夜明けの国』採録シナリオ
著者等紹介
土屋昌明[ツチヤマサアキ]
1960年生。専修大学経済学部教授、中国語・国際事情(中国語)担当。中国文学・思想史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ののまる
5
貴重なDVD(かなり撮影の制限あるが)付き。2024/05/20
uehara
1
「映像のなかの彼らの「歩く」(※ラストシーンはロングショットで紅衛兵たちが"長征"にむかい点になっていく)を、現代史のあと知恵にもとづいて眺めるだけでよいのだろうか。彼らの歩いていった先がどうだったか、ほんとにわかっちゃっているのか、と。それを無視して現代中国を理解できるのだろうか、と。」p.114、土屋発言。関連論文も含め密度あり、自らの文革・中国観を変容させる。2024/10/06
takao
1
ふむ2021/07/16
1
「『夜明けの国』が、紅衛兵の過激な行動をとりあげず、一般の人々の日常を追求したところに、マスコミ報道ではありえない、中国の真実を見る可能性がうかがえた」というように、ここには、革命の尖兵として活躍した紅衛兵ではなくて、むしろ、日常の人々の「顔」に革命の真実を見ようとした(高橋和巳と竹内好の差異)そして、画面に映し出される映像はあまりにも穏やかである。文革の是非はともかくとして、「革命とは日常であり、日常とは革命」であり、「日常生活を自発的に構成しなおす」ことが何よりも求められるのではないか。2016/12/07
澄川石狩掾
0
文化大革命の時期の中国というと、日常生活が全てストップし騒乱状態が長い間続いていたというイメージが強い。しかし、この映画「夜明けの国」は時折不穏な空気を仄めかしつつも(映画の最初の方で出て来たロシア正教の教会が破壊され、後半では文革を讃える記念碑になっていたり、省の知事を「火焼」(打倒する)という物騒な標語が一瞬映ったりする)、人々の日常の生活を映し出して、意外だった。2022/12/11