出版社内容情報
25年間にわたってウンコを拾い続け、ツキノワグマの謎に包まれた生態を明らかにしてきたクマ博士・小池伸介氏が数奇な研究人生と“クマの本当の姿”を語る自然科学エッセイ。
体を張った研究の果てに見えてきた森林におけるクマの役割と自然の神秘とは?
『バッタを倒しにアフリカへ』(光文社)、『鳥類学者だからって鳥が好きだと思うなよ』(新潮社)、『キリン解剖記』(ナツメ社)、『海獣学者、クジラを解剖する』(山と渓谷社)などに続く、研究者の愛情が炸裂する動物研究記です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
榊原 香織
65
”クマさんとはアポなしで会いたくない” 面白い! フィールド系研究者の日々はインディ・ジョーンズ並み。 雪山、懸垂下降、吹き矢 クマの、ん、は人間のに似てて大きくて、でも臭わないそうです。林檎食べたら林檎ジャムみたいなんだって。出会ったことない。2023/09/11
けんとまん1007
52
やっぱり、動物ものは面白い。何より、その熱量が半端ない。クマさんのウンコ・・・そうなんだ・・・。確かに、種を運ぶという役割は、鳥類では、それなりに耳にするが、クマさんもか。しかし、それを調査することの大変さと根気強さは、努力なくしては語れない。こういう努力の積み重ねがあって、動植物の生態が少しずつ明らかになっていくのだということがわかる。調査に使う道具類の進化と合わせて、今後は、どんな風に変わっていくのだろう。2023/08/21
テフェ
25
ツキノワグマのウンコを拾って25年、地道で気の遠くなるような研究の労力に感服、その情熱はハンパではないと感じた。研究の骨子はクマの糞による種子散布。ドングリなどを食べて糞の中に未消化のまま残った種子が芽を出し、究極的に森林を形成するという理念。更には森の生態系と野生動物の繁栄を訴える。クマを増やさないことではなく、山からクマを出さないことが大切であり、クマと人間が干渉せずに住み分ける生態系保全の構築を唱える。ハチミツを餌にドラム缶の罠に何度も入っている同じクマに親しみを感じた。2023/08/31
kanki
19
種子散布者の、クマのウンコはフルーツ香。食べても味しない。著者さんの体力と地道さに敬服。2023/11/01
spatz
18
クマの専門家がクマを追い続けてきた熱い軌跡を描いた、タイムリーな読書となった。25年の間熊のウンコを拾い続けたフィールドワーク。読者の心を惹きつけるコミカルな描写は著者の筆の冴えの見せどころ。仮説をたて、外にでてクマを追う、野山を駆け巡り、絶え間ない観測が必要な場合はクマを飼育している施設でクマの行動を昼夜を問わず張り込む。その間にも発達するGPSなどの装置とも格闘する(クマに取り付けると外れたり壊れたりしやすいし無駄な撮影が多かったり)。見えてきたものは、クマたちが種子を運ぶ役割。2023/10/26