出版社内容情報
70系戦災復旧客車とは、太平洋戦争中に空襲や事故などで被災した車両を応急的に復旧させたものです。戦災で数千両にも及ぶ膨大な車両を失った国鉄(当時は運輸省鉄道総局)では、戦後の輸送量増大からくる輸送力の逼迫にも関わらず、資材や生産力の不足などから、失った車両を新製車両だけで補うのは到底不可能でした。そこで、被災車両のうち台車や台枠、車体など再利用可能なものを流用したうえで応急的な復旧を行った70系戦災復旧客車が、1950(昭和25)年までの間に376両が製造されました。
これら応急復旧の車両は接客設備が著しく劣ることから、世情が落ち着くにつれわずか数年で旅客車から荷物車などに改造されたほか、1960年代までには大半が廃車されました。ただ、わずかに救援車など事業用に改造された一部の車両が、国鉄末期の1980年代後半まで残存していました。
本書では時勢ゆえに記録が極端に少ない戦災復旧客車について、およそ100タイプとなるその外観のバリエーションを中心に、3巻にわたり写真や外観図を使って解説します。上巻では戦災復旧客車の概要と座席車、郵便荷物合造車のうちオユニ71までを解説します。
目次
1 70系戦災復旧客車の概略
2 70系戦災復旧客車の調査の流れ
3 形式別解説(座席車)(オハ70形;オハ71形;オハ77→オハ78形;オハフ71形)
4 形式別解説(郵便・荷物車)(オハユニ71形;スユ71→スユ72形;オユニ70形;オユニ71形)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
えすてい
5
国鉄の客車でありそうで少ないのは「オハユニ」。オハ35系やスハ43系に「オハユニ」はなく(スハニ・スハユならあった)、60系鋼体化客車に「オハユニ」が複数形式ある。70系ではオハ71 500番台から改造されたオハユニ71がある程度の数があり事業用車として営業運転終了後も生き残ったものもある。20mの車体の中で、車掌室・荷物室・郵便室・客室それぞれが狭くなりがちで幹線よりもローカル線で使われたことが多いようだが、1両で3役こなし、その独特な扉配置にはオハ・荷物車・郵便車だけのものよりもそそられる。2024/02/16
えすてい
5
電車にしろ客車にしろ、焼けた車両の台枠や台車、残っている車体を再利用して、資材不足極まりない時代に製造された故に、その構造は痛々しく、およそ「旧客らしくない」見た目の70系客車。座席車なんてデッキもなく、3扉もあったり引き戸もあったり旧型国電の車体そのものだったりとなんでもありだが、座席が木製ベンチではなおさら長持ちしないしサービス面も最悪(この当時は旅客サービスどころでは中田そういう概念すら乏しかったのは否定できないが)なので、早々に旅客輸送から外されて荷物・郵便車に改造・転用されるのもわかる。2023/09/28
えすてい
5
70系客車、存在そのものを知らなかった。戦争で被災した車両は私鉄に払い下げられたものもあるのは知っていたが、国鉄は国鉄で電車から客車まで使える台枠や車体を流用して新たなグループに纏める「70系客車」。戦前からの客車や戦後の旧客(※鋼体化を含む)と比べて不格好で現役時から安普請に見え、救援車なんて相当傷みまくってるなと実感。座席車なんて木製ベンチだったのか。資材不足が深刻な時代の産物だ。中には電車の車体をそのまま使ったのが丸わかりというものもあり、逆に国鉄客車の奥深さも知ることができた。2023/09/27