目次
1(湯を泳ぐ芹;朝の埃 ほか)
2(ひかる綿雲;ビリケンさん ほか)
3(エスペランサ;単身赴任 ほか)
4 平成六年~十三年(猫;ホホジロザメ ほか)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
てくてく
6
2013年刊行の第1歌集。主な題材は出産、育児、家族。切り取り方などに個性があると思った。「母は子の付属物なり子の名前のみを記して首から下げぬ」「闇に目が慣れゆくようだこの町の誰にも名前で呼ばれぬことも」「ざらにいる単身赴任の一人にてざあらにあるらしわれの寂し」「睡眠に重さのあれば雪の夜はすべてを赦す重たき眠り」「きぬさやのさやの響きを愉しみて湯よりあげれば湯気立つわが子」「チェシャ猫の笑いのようなざらつきが月明すごき屋根にはりつく」「一斉に蝶が飛び立つようだった風つよき日にふるはつゆきが」 2018/01/14
yumicomachi
2
◇冷えてゆく紅茶のように遠ざかる幾人かいて年末のまち◇遠きひとますます遠くさくらさく夕暮れひくく銹びる欄干 出産と育児をメインテーマにした歌集であり、もちろん母としての歌には力があるが、私は掲出した二首にみられるような、人との距離や遠く離れた場所への心のやり方にひかれた。2014/12/13