出版社内容情報
第19回日本歌人クラブ新人賞受賞。神奈川県歌人会第4回第一歌集賞受賞。第十三回歌壇賞受賞作家の第一歌集。制御することのできない自意識をひりひりと尖鋭なままスケールの大きい風景の中に解放してこころよい。感傷性に濡れがちな青春の孤独を感傷性ゼロの自問として詠うところに田村の特徴がある。— 三枝昂之 (「跋」より)
目次
1 北二十二条西七丁目(トニオ(平成十二年(二〇〇〇年)以前)
日本近代史 ほか)
2 金剛(真夏のテーゼ;駅の名 ほか)
3 首都の朧夜(ふりがな;蜻蛉 ほか)
4 汐入(胡瓜サンド;熊本純情同窓会(平成二十一年(二〇〇九年)) ほか)
著者等紹介
田村元[タムラハジメ]
1977年群馬県新里村(現・桐生市)生まれ。1995年群馬県立桐生高校卒業。1999年「りとむ」入会。2000年「太郎と花子」創刊に参加。北海道大学法学部卒業。2002年「上唇に花びらを」で第13回歌壇賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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masa@レビューお休み中
96
三省堂の歌集コーナーで惹きつけられるように手を伸ばし、そのまま即買いしてしまった。地元の方ならすぐわかると思うが、タイトルの『北二十二条西七丁目』は、北海道札幌市に実在する住所なんです。彼の青春期から今に至るまでの短歌が収録されています。だからなのか、甘酸っぱさとシビアさが入り混じる、儚くもどこか安堵感を抱ける歌集になっているような気がします。以下、気に入ったうたをいくつか紹介しようと思います。2014/10/20
はち
3
再読。札幌の青春の記録から東京での就職、サラリーマンとしての仕事。サラリーマンと歌人のズレ。青春歌集として読むのは難しいが、仕事を詠んだものはとても共感を持てる。激しい感情の動きや事件は、この歌集には見られない。しかし当たり前の日常を詠み続けることの大切さと難しさをこの歌集は問いかけてくる。2016/07/12
トマス
2
作者の北大在学時から12年間の短歌をまとめた歌集。リズムの整った旧仮名でカッチリした歌を詠みながらも、格好よく生きていけないことへの人間臭い脆さが垣間見えて好きだ。後半はサラリーマン歌人としての職場詠が多く、働く身として共感したくなる歌が多かった。2019/07/22
はち
2
大学時代から社会人になり、三十代まで。舞台は札幌、東京、大阪。あちこちに行った歌もあり、また3月11日以降の福島を描いた歌も見るべきだと思う。特に好きなのは、「街路樹に夜明けを探すふりをしてガラスに映るきみを見てをり」「おほいなる疾風来にけりわれといふ愚問をふつとばすためだけに」「俺は詩人だバカヤローと怒鳴つて社を出でて行くことを夢想す」「旗艦三笠の東郷さんが読め読めと人に勧める『坂の上の雲』」2015/02/19
toron*
0
花びらを上唇にくつつけて一生剥がれなくたつていい くれなゐのキリンラガーよわがうちの驟雨を希釈していつてくれ 七百円の中トロを食ふ束の間もわれを忘れることができない 都市といふ夢の渦中にわれはあり年に一度は花火など見て 春の雨われを包んでわれをややはみ出しそうなものを ゆるして 飛び蹴りを誰かにきめてやりたくて光のなかへ出でてゆきたり 自分をやや道化のように寄せながら描いていて、そのため淋しさと可笑しさがにじみ出る歌が多い。『上唇に花びらを』の章がいちばん好きだった。2021/01/06