内容説明
おさびし山にある一本のさくらの木に、旅人がたずねます。「ちらない花はあるのですか」「さいた花はかならずちります」さくらの木はこたえました。数年後、旅人がふたたび山をおとずれると、木はあとかたもなく消えていました。
著者等紹介
宮内婦貴子[ミヤウチフキコ]
脚本家。1933年静岡県三島市に生まれる。東宝シナリオ研究所を経たのち、数多くの映画の脚本を手がける。独立してからはテレビドラマなど幅広い分野で活躍する。2010年、76歳で亡くなる
いせひでこ[イセヒデコ]
画家、絵本作家。1949年北海道生まれ。東京藝術大学卒業。野間児童文芸新人賞、産経児童出版文化賞美術賞、講談社出版文化賞絵本賞など受賞多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
278
文は脚本家の宮内婦貴子、絵は、いせひでこ。文だが、2つ気に入らない点がある。まず「おさびし山」というネーミングがそうだ。次に、桜の大木を切って風車にしてしまうこと。よりによって、何故に風車なのだろう。脚本家の作品なので、ドラマティックであることを求めたのかもしれないが、そうだとすれば、それは的外れだろう。一方、いせひでこの絵は水彩の良さが遺憾なく発揮された秀逸な絵である。抒情に溢れ、各ページに描かれるクマがそれこそ生きることの淋しさを自ずと喚起する。2024/08/10
masa@レビューお休み中
120
生命は巡り巡っていく。ひとりの旅人とおさびし山に咲くさくらの木の出会いと、出会ったその後が描かれています。息をのむような美しい桜に出逢って、旅人は「もう会うことはできないのでしょうか」と尋ねます。その質問にまた会えますともと答えるさくらの木。月日は巡り、互いに時を重ねて、ふたりは再び再会をします。その再会は旅人にとって想像のできなかったものだったのです。生命とは、どんな形になっても変わりなくあるもの。必ずしも、同じである必要はないのかもしれないないですね。2015/11/02
Hideto-S@仮想書店 月舟書房
104
桜の花をみて心が震える理由が解った気がした。旅人が桜の木に問う。「散らない花はあるの」。「咲いた花は必ず散る」と桜は答える。生命の旅を終えたいきものは、光に包まれて生命のもとへ帰っていく。別れは悲しいけど、今日出会えた事を覚えていよう。流した涙はそよ風がぬぐってくれる。生命はめぐりめぐるものだから、きっと、また会える。出会った事を覚えているかはわからないけど……。生命の輝きと儚さを早送りでみるような気がするから、桜はこんなにも心に響くのかな。本書を読んでそんなことを感じた。3.11に発行された生命の物語。2015/04/05
ままこ
102
「ちった花はどこに行くのですか」旅人の問いかけに桜の木の答えは…。季節は巡り旅人と桜の木の思いもかけない形での再会。透明感のある色彩で描かれた桜の木は命の輝きを放っているようで美しくその情景は風の匂いまでしそう。いせさんの絵にうっとり。命あるものの儚さと自然の理。普遍的な問いかけを叙情的に描いた大人向け絵本。2019/03/05
tokotoko
60
この本の感想は、めずらしく、とっても悩みました。登場するのは、たった2人。さくらの木と旅人、だけです。しかも、旅の途中に出会ったことで始まって、ささやか~なお話・・・になりそうなんだけれど、そうじゃなくて!ずっと何かを問いかけてくる文と、いせさんの絵が、テーマを自分のすぐ近くまで届けてくれます。テーマはきっと読まれる方によってちがうと思うので、言わないね!けれど私、さみしい名前の山でも朗らかに生きてたさくらの木と、その生き方が大好きです。2015/05/05