内容説明
シリーズ完結を迎えた大ベストセラー『ハリー・ポッター』を題材に、キリスト教、ジェンダー、階級、病気、帝国、映画化、英語の7つのテーマを明快に分析・解説し、作品に関する興味を「大学で学ぶ文化研究や文学研究などの学問と結びつけたらこうなる」という見取り図を示す。
目次
第1章 ハリー・ポッターと反キリスト教論争
第2章 ハリー・ポッターとゲイの校長先生
第3章 ハリー・ポッターとヴォルデモートの階級
第4章 ハリー・ポッターとルービン先生の病気
第5章 ハリー・ポッターと帝国
第6章 ハリー・ポッターと映画監督の陰謀
第7章 ハリー・ポッターと英語の教室
著者等紹介
板倉厳一郎[イタクラゲンイチロウ]
1971年、京都生まれ。京都大学大学院博士課程修了、博士(文学)。現在、中京大学国際教養学部准教授。専門はイギリス現代小説、イギリス文化研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Ecriture
5
良本。ハリポタ世界の魔法をテクノロジーとのアナロジーにおいて読む辺りは、三浦玲一のスキルとしての外国語論や小林矩子のコンピュータ論と重ねて読むと良いだろう。ハリポタが反キリスト教的との批判に対し、自己犠牲・隣人愛の観点からキリスト教性を解くあたりは、ミルトンのサタンを使った小林のオーソドックスな評に別の色を添えている。ダンブルドアのゲイ性が作中で明らかにされない理由をセジウィックのホモセクシャルを代替するホモソーシャル論に求め、ヴォルデモートの悪にイギリス階級社会の影を読み込むなど、これぞ文学という感じ。2013/04/26
ブルーローズ
5
2012年8月読了。よく売れた本の端々からうかがえるさまざまな問題を掘り起し、研究しよう、という本。役柄から想像されるアクセントと実際に演じた役者との間に齟齬があることなどは、よく知られているが、魔法の国という仮定のもとに何を問題提起しているのか暗喩なのかなども。2013/03/21
サトゥルヌスを喰らう吾輩
4
ハリーポッターとキリスト教、ジェンダー、階級、病気、帝国、映画化、英語について。テーマごとに読書意欲が掻き立てられました。しばしば登場する論文集が邦訳されていないのが残念でなりません。2019/05/14
メリー
2
ハリー・ポッターが好きなのでよみました。さらっと読みすぎてしまったのでもう少しじっくり読めば良かったと少し後悔しています。ジェームスの話、映画のカットの話、ヴォルデモートの話が特に興味深く面白かったです。2013/04/15
柊 ユウ
2
「ハリーポッターを卒業論文のテーマに選択するのは難しい。現実との関連付けが不十分で、結論が作品の中で完結しがちだ」というゼミの先生の言葉がきっかけ。この本では、そのようにならないよう例を挙げている。たとえば、階級や宗教問題、狼人症を性病、内なる狂気としてとらえるなど。ハリーポッターでテーマ選択を考える学部生には良い指南書だ。2012/12/16