内容説明
江戸の嘉永から文久年間にかけて、軽業見世物は全盛期を迎えていた―蜘舞の流れを汲み、寸分違わぬ正確さと細やかな技芸で魅せる日本の軽業は西洋の人々にどれほどの衝撃を与えたのか。西洋と東洋の演劇文化の衝突、融合、理解の跡を見ることができ、さらに日本芸能を再認識する稀少な一冊。
目次
軽業師の倫敦興行―ロイヤル・ライシアム劇場、一八六八年
合法と非合法のはざまで―鉄割一座のサンフランシスコ興行
米国興行に賭けた芸能六座の動向―一八六七年を中心に
早竹虎吉とそれに連なる芸人たち―虎吉は何人いたのか
肖像写真に関する美学的考察―演劇図像学の研究に向けて
早竹虎吉の最期―描かれた野辺送りと虎吉の肖像写真について
日本音楽受容史事始―下座音楽の受難
領事フィッシャーの紐育裁判―興行契約書の罠
ベネフィット興行に見る演劇的算盤勘定
著者等紹介
三原文[ミハラアヤ]
東京生まれ。1981年、大阪大学大学院文学研究科修了。国際演劇の制作現場を経た後、富山女子短期大学、大阪大学を経て大谷女子大学、現大阪大谷大学文学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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志村真幸
1
著者は、芸能史研究者。 本書は、幕末~明治初期に海外で公演した日本人芸人たちの足跡を追ったもの。国外資料がよく探されており、これまで明らかでなかった現地での公演や活動について、実に詳しく紹介されている。 来日した外国人手配師によって、一座まるごと連れて行かれるわけだが、海外渡航が可能になった途端に、競うようにして出ていっている。それだけ需要があったということであり、劇場での娯楽が中心だった時代性を感じさせられた。 現地での演目や、契約関係、三味線などの音楽がどのように受け止められたのかなどまで。2025/04/29