内容説明
1980年代に入り、経済のグローバリゼーションと情報化によって、ニューヨークは急速にポストモダンな様相を呈する世界都市に変容していった。主に1980年代に生み出された、ニューヨークの都市文学や都市文化、ヒップホップ、カフェでの詩の朗読活動、ブラック・ムービーが、経済のグローバリゼーションとリストラ、情報化社会がすさまじい勢いで進行するニューヨークに、どのようにリスポンドしているのか。
目次
グローバリゼーションと情報化のなかの八〇年代ニューヨーク
第1部 歴史的な視座から見つめられるニューヨーク―オースターとドン・デリーロ(ポール・オースター『ニューヨーク三部作』―橋、野球、人種;『ニューヨーク三部作』以後、そして『アンダーワールド』)
第2部 『虚栄の篝火』『アメリカン・サイコ』『ブライトネス・フォールズ』と八〇年代ニューヨーク(『虚栄の篝火』―グローバル化するニューヨーク;『アメリカン・サイコ』―都市化と空虚な自己の出現;『ブライトネス・フォールズ』―バビロンとしてのニューヨーク)
第3部 ヒップホップ・ブラックムービー・都市の声(ヒップホップという亀裂;ニューヨークとアメリカ映画のポリティクス;都市の声―ニューヨリカン・ポエツ・カフェの詩人たち)
著者等紹介
伊藤章[イトウアキラ]
1948年生まれ。北海道大学大学院文学研究科博士課程英米文学専攻満期退学。北海道大学言語文化部教授
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感想・レビュー
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Ecriture
5
アメリカ文学の中でニューヨークがどのように描かれてきたかを伊藤章、上岡伸雄、本城誠二、野坂政司らが読み解いていく。特に上岡さんのオースター論、デリーロ論が目当てで購入。いやはや、オースターからブルックリンの都市性を丹念に拾い上げていて、自分では気付かなかったことばかりで勉強になった。デリーロの方もこれから言及・引用させてもらうことになるだろうなという内容だったので、また近いうちに引っ張り出して引用します。2011/07/20
Skeltia_vergber
1
文学、映画(フッド・ムービー)、音楽(とくにヒップ・ホップ)、詩などから見えてくる/に集積されるニューヨークを文学系の研究者が描いた本です。副題が内容とずれているように思いますが、ポストモダン都市=世界都市やポスト産業都市とも指摘されているし、ニューヨークの二極化や第三都市化についても言及あり。作品から「都市」を分析するのも面白いし、やってみたいなぁ。2009/01/21