出版社内容情報
怪奇事件に挑む名探偵を描いた物語は、シャーロック・ホームズとそのライヴァルたちの時代から、21世紀の今に至るまで数多い。本書では「ホームズのライヴァルたち」の時代を中心に、ミステリとホラー、双方の愉しみを味わえる作品を収録。また、本書から「現代世界幻想文学選」として、欧米以外の現代幻想文学のつむぎ手たちを紹介していく。初回はシリアの短編作家、ムスタファー・タジュディーン・ムーサー氏。その他、第二回『幻想と怪奇』ショートショート・コンテスト佳作3作品も掲載。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あたびー
40
ホームズのライヴァルたちと銘された今号では、まず冒頭に挙げられたシリアの作家ムスタファー・タージュッディーン・ムーサーの超短編群に心を奪われた。内戦の影を色濃く映しながら、人間の心の美しさを幻想的に描く事がどうしたらできるのだろうかと思った。つい先日のアサド政権崩壊後、彼はどうしているだろうかと思いを馳せた。20世紀初頭の怪奇ミステリーを集めた特集も読み応えがあった。巻末のショートショートコンテスト佳作入選作の中で、秘湯好きの私は水城瑞貴氏「昇天楼」が特に楽しかった。行きたくないけどねw2025/01/04
timeturner
5
不条理と死に満ちた現実に束の間忍び込む幻想が心に刺さるシリアの超短編。「霊媒師のカナリア」は楽しみに待った甲斐のある作品だったし、ロンドンを彷徨する「群衆の人」と「祭儀」を並べ、さらに「小さな人々」に関する考察を付した構成も素晴らしい。2024/12/07
5〇5
4
今回は心霊探偵特集である ♦収録作品は1920年代以降に発表されたものだ。概ね80年前のオーソドックスな幽霊譚が中心であるが、多彩な探偵たちが登場する ♣心霊探偵ものは現在でもシリーズ化された作品が多数あり、根強い人気があるようだ ♥その魅力は、伝統的なホラーの要素に加え、探偵キャラクターの独自性によるものだろう ♠これらの絶妙な融合が、今なお支持され続けている理由であるといえよう。2024/12/12