出版社内容情報
《幻想と怪奇》ではこれまで、題材や時代、媒体をテーマに各巻を企画してきましたが、今回は初めて、特定の「都市」をテーマにしました。どこかって? もちろん、怪奇幻想の本場イギリスの首都、数々の名作の舞台となったロンドンです。夜霧にけむるイメージを生かし、ガス燈ともる夜道を馬車が行く時代を中心に、クラシカルな作品を集めてみました。ビッグ・ベンが時を告げるウェストミンスター宮殿から、閑静な郊外の住宅地まで。伝統的な幽霊譚あり、あなたが読んだことのないような奇妙な物語ありの、幻想紀行をどうぞ。
なお、本巻より創作ページを拡大、連載コラムも開始しました。より自由で、さらに充実した《幻想と怪奇》を、どうぞお楽しみください。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
翠埜もぐら
16
短編集は読み易くて良き。H・G・ウェルズの「白い塀の緑の扉」は怪奇小説と言うよりもSFチックで、ウェルズだなぁと思ってしまいました。ロバート・エイクマンの「哀れなる友」理解できずに消化不良気味でしたが、珍しく英国国会内の話で、委員会とか陳情とか選挙とか、怪奇が怪奇として現れる場所ではなく、議員として活動しつつも私人としての恐怖が背中にべったりしている感じで、通常怪奇小説の中には出てきにくいジャンルで面白かったです。ただ全体的にどの話も印象が今一つ薄い感じで、まぁ短編だしこんなもんかな。2024/02/12
いっこ
7
久しぶりの『幻想と怪奇』。ロンドン怪奇小説地図つきで、小説ごとに舞台となる地域の一角の写真が掲載されている。それは楽しみだと読み始めると、不気味な怪奇小説がこれでもかというくらいに続く。自分の部屋で蛾が蠢いたり、喉を切り裂かれたりする夢を見るのではないかと心配しつつ、少しずつ読んだ。H・G・ウェルズ「白い塀の緑の扉」は、そういう怖さとは異なる不思議な世界を堪能できる。2024/01/08
timeturner
7
【幻想と怪奇14 ロンドン怪奇小説傑作選(新紀元社)】ロンドンを舞台にした短編特集というわたしのツボを押しまくりの号。《ロンドン怪奇地図》まで付いていて、これはもう「ロンドン怖いぞ、一度はおいで」と言われているようなものだね。そして良作揃い。ウェルズの「白い塀の緑の扉」は昔、原文で読んだことがあったけど、改めて日本語で読んだら胸をぎゅっとつかまれたように切なくなった。テーマ外の創作「獣の骨」には不気味だけど抗いがたい魅力のある世界が広がっている。 2023/10/27
5〇5
6
ロンドンを舞台にした怪奇小説特集です。19世紀末から20世紀初めの古きロンドンの市街や広域の風景に風情が感じられますね。幽霊譚に霊力や異界や不条理な話などクラシカルな怪異の数々を楽しみました。また、「怪奇幻想短編の愉しみ」と題して短編作品を深掘りする連載コラムのスタートも嬉しいですね。2023/12/06
グーグー
5
『幻想と怪奇 14』を読んだ。ロンドン怪奇短編集だ。ページをめくるとまずロンドンの怪奇小説地図があらわれる。行ったことにある地名が懐かしい。といっても観光旅行で行った所だけど。ロンドンの街にときどき出没する「白い塀の緑の扉」は、主人公が少年の時に迷い込んだ場所で彼の心をくすぐる。G.H.ウェルズの作品で、ファンタジックで一番心に残った。2024/02/27