出版社内容情報
第41回 日本SF大賞 特別賞を受賞した立原透耶編纂の中華SFアンソロジーがついに発売。
『時のきざはし 現代中華SF傑作選』に続き、掲載作家は『三体』の著者劉慈欣と並び称される、王晋康や韓松、何夕といったベテランをはじめ、梁清散、陳楸帆、宝樹など、中堅・新人の全15人。陸秋槎氏の新作「杞憂」の初邦訳作品をはじめ、20年前にこのコロナ禍を予言したかのような「死神の口づけ」(潭楷)ほか、SFから幻想譚まで豊富な内容で、表題作「宇宙の果ての本屋」(江波)は本好きなら誰もが感動する一編となっている。
著者等紹介
立原透耶[タチハラトウヤ]
大阪生まれ、奈良育ち。小説「夢売りのたまご」で1991年下期コバルト読者大賞を受賞、翌年文庫でデビュー。中華圏のSFの紹介をライフワークとし、主な仕事に『三体』(早川書房)監修のほか、翻訳が多数ある。2021年、第41回日本SF大賞特別賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
52
人生を賭けた水星への創造物誕生と密やかな愛に心を躍らせた「水星播種」。しかし、幕引きはシニカルだ。結局、新しき生物も業には敵わないのか・・・。「時の点灯人」は時間列が分かるとアッと言わせられるミステリーとなっているのが見事。「人生を盗んだ女」は映画『パラサイト』のように努力が必ず、報われる訳ではなく、人生すらも階級とそこに付随する環境で決められてしまう事の絶望と足掻きを痛々しいまでに真摯に描く。とは言え、眠っている間にじっと顔を覗き込み同期しようとする人がいるって十分、ホラーだが・・・。2024/04/30
緋莢
16
図書館本。『時のきざはし』に続くSFアンソロジーで、15人の作家による15編が収録されています。宝樹、陸秋槎、陳楸帆など、日本で翻訳の単著が出ている作家から、万象峰年、譚楷などこの本に収録されている作品が、初邦訳という作家までいます。その譚楷の作品「死神の口づけ」は、1979年にソ連で起こった、ある流出事件をモデルとしているようで映画「アウトブレイク」公開されて間もない頃に(続く2024/04/14
本の蟲
16
『時のきざはし』に続く立原透耶編、アンソロや単行本でお馴染みの作家から、初邦訳作家まで含む現代中華SF傑作選15編。環境、ロボット、宇宙、言語、中国古典に仏教SFまで、どれも密度が高く、外れなしの高水準でどんどん読み進められる。お気に入りは神話的結末で幕を閉じるリアル「新世界の神になる」案件の王晋康『水星播種』。杞憂が杞憂でない、既読単行本より好きになった陸秋槎『杞憂』。言語は人格や文化も浸食する、長谷敏司作「地には豊穣」を思わせる昼温『人生を盗んだ女』2023/12/21
もち
13
「これはあんたがあの時ここに預けたもの。センパイが今から返すよ」◆同時通訳者になりたい少女を救うため、語り手は奔走するが――。ミラーニューロンと知識と時間の向こう側。超技術がもたらした変革と、最後の切ない大逆転。(『人生を盗んだ少女』)■億年単位で描かれる水星での文明興隆、瓶の液体が革命の裏側を見せる時間SF、「本」の真の意義が驚きと感動を伴って導かれる表題作など、年間ベスト級の新鋭SFが揃う。短編ながら切れ味鋭いミステリ的解決を遂げる作品も多く、何度も目を明かされた。2023/12/28
スイ
12
手にした時には分厚さに驚いたけれども、読み始めたらどの作品も面白くて面白くて、いつのまにか読み終わってしまった。 「猫嫌いの小松さん」(程婧波)には胸が温まり、「杞憂」(陸秋槎)にはスケールの大きさに圧倒された。 「水星播種」(王晋康)と「人生を盗んだ少女」(昼温)は、読み終えた後もずっと考えてしまう良い作品。 2024/02/05