出版社内容情報
1974年に惜しまれつつ休刊した幻想文学研究誌《幻想と怪奇》その衣鉢を継ぐ新雑誌が45年後の今、新創刊!
内容説明
海外幻想文学の翻訳・紹介を先導した紀田順一郎・荒俣宏による『幻想と怪奇』(1973~74)。日本初の幻想文学専門誌が、休刊から45年を経てここに復活する。第一号のテーマは「ヴィクトリアン・ワンダーランド 英國奇想博覧會」。技術や交通が大きな変革を迎え、文化がいっせいに花開いた19世紀後半のイギリスで、自由な想像力をペンに乗せて競った文豪たちや流行作家たちの奇想あふれる小説と、かの時代に夢を馳せる現代作家たちの作品をともに収録した、物語の博覧会にようこそ。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
evifrei
18
ガス灯、石畳、霧のロンドン―。英国ヴィクトリア朝は現代人からみるとロマンに溢れた社会だが、そんなヴィクトリア朝を象徴する作品を集めた短編集。個人的には好きな作家のレ・ファニュの初翻訳の作品や新訳での作品が収められていたのがとても嬉しい。(レ・ファニュは厳密には英国の作家ではないのだが、英国作家としての評価の高さから加えられたのだろう。)また、切り裂きジャックをモチーフにした『下宿人』も、切り裂きジャックのファンとしてはなかなか面白く読めた。改めてヴィクトリア朝の魅力を感じ入る。2020/07/05
翠埜もぐら
14
ホラーが苦手で「怪奇小説」が好きなので、必然的にこの時代の小説に偏りがちになります。ですが考えたら不思議な時代。内燃機関と科学技術の発達によるグローバル化と近代化。でも心霊術・降霊術が大流行した時代でもありました。少し前まではごく自然に感じていた恐怖をわざわざ出向いてまで感じたい人々って何考えてたんだろう。あぁ、でも其の辺は今もあまり変わらないのかもしれませんね。レ・ファニュの短編がうれしかったのと、ジャスパー・ジェスパーソンとレーンのシリーズが気になりました。探してみようかしら。2022/04/16
ハルト
11
読了:◎ 英国ヴィクトリア時代。ホームズ、切り裂きジャック、ドラキュラ、ジキル&ハイド、交霊術、万国博覧会。光が強ければ闇も濃い、そんな時代の怪奇幻想譚が載せられている。アーサー・マッケン「失踪クラブ」、リチャード・マーシュ「奇妙な写真」、ブラム・ストーカー「決闘者」、H・G・ウェルズ「ポロックとポロ団の男」とどれも好みでした。それと「贖罪物の奇妙な事件」が怪奇探偵ものとしてもよかったです。2020/05/19
timeturner
9
一冊まるごとどっぷりヴィクトリア朝の英国! 霧深い街角を彷徨っているような気分になった。ヴィクトリア朝が背景でも当時の女性差別からは自由なリサ・タトルの諮問探偵物がいい。もっと読みたい。2020/04/04
三谷銀屋
8
19世紀英国を舞台に、霧の向こうに得体の知れない何かが蠢くように怪しげで、けれどエレガントさも漂う怪奇小説の世界が堪能できるアンソロジー。子供達の無邪気な残忍性がエスカレートしていく様が衝撃的な「決闘者」(ブラム・ストーカー)が印象的。愛欲の地獄の凄まじさが渦巻く「ジキル博士とハイド氏、その後」(キム・ニューマン)も人間の二面性のもう一つの表現のようで面白かった。怪談民話の趣があるレ・ファニュ幻妖世界の3作品も恐ろしくて美しい。「下宿人」(ベロック・ローンズ)は徐々に高まる疑惑と緊張感が読み応えがあった。2020/09/30