内容説明
彼の長編小説から、どんな「雑音」が聞こえるのか?誰もが思っているのに、言葉にされてこなかったこと。アンチに転じた現役作家が、いま語り尽くす!村上春樹の何が「劣化」しているのか?
目次
序にかえて―村上春樹と僕
第1章 純真さと性的放縦(永遠にピュアな少年少女たち;エクスキューズとしての性的放縦 ほか)
第2章 当事者であることを回避する人々(定型句「やれやれ」の興亡;ネガティブな感情に対する障壁とエゴイズム ほか)
第3章 性と「萌え」をめぐって(反復される「遠隔性交」のモチーフ;セルフポルノ化する性描写 ほか)
第4章 駆動するオポチュニズム(複雑さと恣意性の間に;事実を無制限に多層化する伝家の宝刀 ほか)
終章 人はなぜ村上春樹を求めるのか
巻末資料 村上春樹全長編小説概観
著者等紹介
平山瑞穂[ヒラヤマミズホ]
1968年、東京都生まれ。立教大学社会学部卒業。2004年にデビュー作の『ラス・マンチャス通信』(角川文庫)で第16回日本ファンタジーノベル大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ひめか*
22
村上作は2作ほどで合わないと思ったので、ほぼ読んだことがない。過去作を分析し、類型化して事細かに解説しており、こんなに熱を持って批判できるのは本当に愛ゆえなんだろうな。確かにどの作品にも似た傾向が見られ、頷けた。私が合わないと思った理由も平山氏が思うことの一つなのかもしれないと思った。でも何十年かの時を超えて再会する物語や宗教信者など、平山氏の作品に影響を受けている部分も大いにあると思う。逆に村上作を読んでみたくもなった。作品によって作風の違う平山氏にとっては、これほど類似した作品は考えられないだろうな。2023/05/17
もりの
9
冒頭読んで、「しっくりこないのは分かったけど、それで本まで書くか?」と思ってしまった。平山さんは好きだし、村上春樹アレルギーというのも分かるけど、それ以降読む気になれなかった。ほんと、憎めないから、タイトル通り愛ゆえに書いているんだろうなぁ2021/11/19
岸田解
2
平山瑞穂と村上春樹、どちらについても私はあまりいい読者とは云えないだろう。しかし、それでも「平山瑞穂が村上春樹について書いた本」を「読まないわけにはいかなかった」のだ。/村上春樹の長篇小説は(現時点での)全十四作の丁度半分、七作目の〈国〉で止まってしまっている。次の〈ね〉が、なかなかハードルが高いせいでもあり、本書の中で何度も出てくる表現に倣えば、「雑音」が気になってしまうからでもある。/ただ、終章の「サブカルチャー」に絡めた論述は、もっと時間をかけてより深く考察しても良かったのではなかろうか、と……。2017/11/26
山一工房
0
「愛ゆえの」とあるように、ときに感情的になり過ぎているようにも感じた。そもそも、村上春樹を純文学としてとらえること自体が間違っていると思うけど。純文学よりのエンタメみたいな感じがする。伊坂幸太郎のようになれればわかりやすかったんだと思う。ジャンル間を飛ぶコウモリみたいな存在。2022/10/06