内容説明
詩人・草野心平が開いた「酒場學校」が、二〇一三年、新宿ゴールデン街で閉校した。最後の五年間、「水曜日のママ」をつとめた著者が描く、偏愛と断片のドキュメント。
目次
第1章 一年生の見聞録(ばっぷくばっぷく、と大人になるまで;酔うほどに禮子さんの声はやわらかい ほか)
第2章 水曜日のスケッチ(水曜日の男、今泉さんの豊かなおひげ;上田さんの優しい昭和二十年代 ほか)
第3章 昔の男ども(ノラのママは、おっとりしていて働き者;キンちゃんは毎日五時にやってくる ほか)
第4章 禮子さんの恋(生まれる前から、もらいっ子になると決まっていた;秋田の鉱山でお嬢さんとして育つ ほか)
第5章 閉校の記(Xデーは、十月みそか;はるか彼方のオホーツク ほか)
著者等紹介
金井真紀[カナイマキ]
1974年、千葉県生まれ。うずまき堂代表。ライター、イラストレーター、放送作家、書籍編集などを稼業とする。新宿ゴールデン街にあった「酒場學校」が2013年10月に閉店するまでの最後の5年間、「水曜日のママ」をつとめた(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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oldman獺祭魚翁
46
草野心平が収入の足しにと開いた酒場「學校」新宿のゴールデン街のお店に卒論が「草野心平」だった著者が押し掛けママとして当初は代行代理、後には「水曜日のママ」として、務めたお話。草野を偲んで集まる多くののんべぇの話や、リアルママの井上禮子ママの思い出話、そして「學校」を閉める日々の話などが、著者の軽い筆致で書かれている。肩肘張らず気軽に読める本です。2023/01/23
みなず
6
一気読み。魅力的なセンパイ達に、笑わせられ、励まされ、開眼させられた。含蓄ある言葉は、頷くばかり。“「空は…何色?」”と確かめながら、人生なんて大したことない、なんて嘯いて、あと少し、生きてみよう。2018/10/07
さくら
4
草野心平を敬愛している筆者が、草野が始めた店「学校」に行くことで、多くの人々に出会うお話。当たり前のことだが、同じ年代の方でも、一人して同じ人はいないのだなと思った。お酒の飲み方も、店に来るペースも。筆者にとって、ちょっと苦手な男性のエピソードが好きだ。艶子さんの「お互いの人生のいちばん輝いていた時期を知っているから、どうしても厳しくできないの」という言葉、あたたかみがあっていいな。もう学校はないけれど、自分自身もあの空間にいたような優しい気持ちになった。2023/05/25
sanukinoasayan
4
詩人、草野心平が赤貧の末に開いた酒場「學校」、共に店を切り盛りした禮子さん、その店を結局は継がなかった筆者。この「學校」に集い、去った男たち、女たちの、なんとも見事な本物っぷりに、我が身はどうかと問わずには居られない。下戸の私にもこんな本物達と相見える居どころは何処かにないものか。2019/09/02
log_ntc
4
草野心平が開いた「酒場學校」を舞台にした群像劇、語り手・金井真紀、といった感じ。 個性的で愛嬌のある店主と客=登場人物(ほとんどおじさん)たちに、初めはクスクス、ニヤニヤしながら読んでいた。でも、禮子さんの一人語りが始まる頃から急にしんみりしてゆき、そのままに結局閉校まで至る。 金井さんは「選おじさん眼」に自信があるというけれどその描写も秀逸で、みんながみんな魅力的な人間に思えるのだ。2018/10/05