出版社内容情報
平安時代─大内裏で下働きをはじめた少女・萌黄は、清少納言や、路上の歌うたいとの出会いを経て、言葉を広める“紙”の魅力に惹かれていく。「枕草子」の裏側にいたかもしれない少女の、波乱万丈の物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
chimako
83
【読書感想画課題図書】いかにもYAな一冊。幼くして親を亡くした少女萌木の成長譚。女官だった母の後を追うように大内裏の下働きをすることになる。清少納言や女官たち、下働きの下女や中宮の住まいの様子などが細やかに描かれている。萌木が父と出合う場面は唐突で物語としては中途半端な気がするが「紙」や「草子」を通してその時代の文化がうかがえる。感想画の課題図書としては挿し絵が多い。その挿し絵も線やモノクロの色合いが強すぎて想像を羽ばたかせるには不向きかも。課題図書の日本文学は時代物が2冊。もう少し身近な物語が良いなぁ。2020/12/04
nico🐬波待ち中
64
中宮定子の住む職御曹司で下働きをする少女・萌黄目線の物語。長徳の変の後苦しい立場となった中宮定子。大河ドラマ『光る君へ』と丁度同じ頃の話で映像がありありと目に浮かんだ。枕草子の一節も出てきたのも嬉しい。この時代、特に都では身分の違いで生き方も全く異なる。身分をわきまえ、出来ることを精一杯にやり遂げる萌黄に好感が持てた。理不尽な目にあってもできることを手探りでやる萌黄たち庶民の方が、絶えず腹を探り合い自分以外の者を蹴落としながらでしか生きられない貴族たちよりも生きる喜びを味わえたのでは、と思えてならない。2024/05/19
真理そら
58
枕草子で書かれた状況を下働きの萌黄の目を通して描かれた作品、などとまとめていいものやらw父の縁の紙が萌黄に不幸をもたらした時は児童文学なのにやるせなさに胸が詰まった。定子のその後を考えると萌黄の物語とは別の哀しい物語も思い浮かんできてしっとりした気分で読み終えた。2020/05/27
しゅてふぁん
49
羨ましい…萌黄が頭弁から声を掛けられたときに心の声が口からこぼれ出た(笑)これって枕草子の、百人一首の、あの場面だよね!と色んな本を引っ張り出して確認して読み耽って、、、寄り道しすぎてしまった。女房目線で枕草子の舞台裏を書いたものはいくつもあるけれど下働き(庶民)の視点からは珍しいのではないかなと。こんなに主人公を羨ましく思った読書は久しぶり。紙と筆があれば、か。私はそれらにより生み出されたものがあれば、だな。2020/04/02
花林糖
16
(図書館本)職御曹司(后の為の役所)の下働きで働く事になった萌黄が主人公で、藤原道長が実権を握り中宮定子が厳しい立場に居た頃の物語。苦しい立場に追い込まれても頑張る萌黄が逞しい。大人になったその後の物語も読んでみたい。(清少納言が枕草子を書いていく様子も描かれている)2019/10/22