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出版社内容情報
電話帳で同姓同名の人物を探し出すという、ふとした遊びが、現実と関わりをもち始めたとき、植民者エレディア一族の汚辱に満ちた来歴が明らかになる、完璧なる小説。
内容説明
〈開かれた結末、終わりのないストーリー、言ってみれば責任を、その本来の場所に、すなわち読者一人一人の良心と想像力に突き戻し〉ながら、新旧両大陸の人間のアイデンティティの問題に迫るカルロス・フエンテスの完璧なる小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
saeta
6
新世界メキシコと旧世界パリを行き交う、読み応え充分な怪奇的で不気味な小説だった。この不気味な感覚は、忘れた頃にまた読みたくなりそうな気がする。2017/11/22
rinakko
4
素晴らしい読み応えだった。ゴシック小説(好き!)という体裁を少々意外に思いつつ、時間と空間が複雑に錯綜しながら茫漠と広がっていく作風に、すっかり惑わされ捕りこまれた。物語全体を蔽う不穏な影と執拗な妄想、纏わりつく不気味さと怪奇性。わかり辛く読み難い箇所が幾つかあり、行きつ戻りつして読んだ。語り手である“私”は友人のブランリーから、彼が体験した異様な物語を聴かされる。旅中で知り合った考古学者とその息子、二人は町々で同姓同名者を電話帳で探すというゲームをしていた。そしてフランス人のビクトルを見付ける…。2011/03/16
Mark.jr
1
フランスの老伯爵と謎めいた家族との交流を描いた小説です。終始靄のかかったような雰囲気に包まれた幻想小説ですが、著者の命題とも言えるメキシコという国とは何かというテーマもしっかりと盛り込まれています。さすがの作品です。2019/05/20
ksh
1
キリスト教的パラノイアという通奏低音の上にインディオの呪術師たちの叫びが重なるような不気味な物語。語りそのものが幻惑の様に編み込まれていて、物語を追っていくのも困難ゆえに何度か投げ出しそうになる。中盤、物語が収束するどころか堰を切ったように語りは氾濫しはじめ、もはや全体像はまるで掴めなくなってしまった。理解に先行する、捉えがたい恐怖への好奇だけで読み進めた。歴史的背景などほぼわからないまま読んだが、おそらくそれを知ったところで理解の手助けどころが物語を余計に拡散させるだけであろうことは間違いない。2014/12/24
つーさま
0
友人ブランリーが私(フェンテス)に語る神秘的で不気味な話―旅の先々で、自分たちと同じ名を持つ者を探す奇妙なゲームをする親子の物語。それはある意味、他者を認識することで初めて真の自己認識が可能になる、アイデンティティー追求のゲームと言える。複数の語り手によって語られ、読者は夢か現実か、あるいは非現実か現実か判別のつかない空間をさまよう。さらにそれぞれの場面が密接に関連しあうわけではなく、ただただ説明のないまま並べられ、正直戸惑った。(続) 2012/07/19