感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アルピニア
53
<12月に>バーナビーにできることは曲芸だけ。跳んだり、踊ったり、手品をしたり。修道院で暮らすようになったバーナビーは、クリスマスに他の修道士のように立派な歌や写本や絵や工芸品を捧げることができない自分に落胆します。自分にできることと言えば・・。フランスに古くから伝わる伝説をもとに書かれたお話だそうです。「祈り」や「贈り物」の本質について考えさせられます。「それぞれが賜物を受けているのですから、神のさまざまな恵みの良い管理者として、その賜物を用いて、互いに仕え合いなさい(ペテロの手紙)」2021/12/24
彼岸花
17
人々が、楽しいクリスマスを迎えている最中、バーナビーは、たった一人、修道院のマリア像の前で、曲芸を披露します。この特別な日の為に、荘厳な雰囲気に包まれ、精一杯の祝福を。不安に駆られながらも、力尽きるまでやり遂げた精神力、ひたむきな心に魅了されました。たった10才の子供が、泣きながら思い描いた贈り物。踊る聖人として認められたバーナビーの奇跡。どんな時も、希望を失うことのないよう、700年という時空を超えて、私たちに明るい未来を届けてくれたようです。絵の中で使われている朱色が映えて印象的でした。2020/12/24
遠い日
10
フランスに何百年も伝わる話の、クーニーによる再話。修道院で世話になっている孤児の曲芸師バーナビー。自分にできる唯一のこと、曲芸を必死にすることで、マリアさまへの祈りとする。心に煩悶と修道士たちの反感を感じながらの、秘密の行い。ささやかな、しかし、まっすぐな気持ちの輝き。祈りとは、本来このような行いをいうのだろう。クーニーの前書きも絵も、ともにすばらしかった。2016/11/15
鳩羽
9
フランスに昔から伝わる曲芸師のおはなし。バーナビーは父親と曲芸師をして生活をしていたが、父親が亡くなり一人ぼっちになってしまう。冬が近づくと、人々は曲芸を眺めるところではなくなり、途方にくれていたバーナビーをとある修道士が連れ帰ってくれる。修道院で暮らし始めたバーナビーだったが、修道士達のようにマリアさまのための仕事ができないことを気に病み、毎日マリア像に曲芸を見せるのだった。特別な行いでなくても、真心と、自分のできる精一杯を捧げると、奇跡は起こるのだろう。そんな清々しさを感じさせてくれる美しい本だった。2016/10/30
つき
8
曲芸しか知らない10歳の少年が、マリア様に喜んでもらおうと、像の前で一生懸命に芸をする姿を誤解されてしまうシーンはやるせない気持ちになる。 誤解をして告げ口をした修道士は恥じていたが、現実にもこういうことは多々あると思う。そのとき、どういう行動を取るのか…人間性が現れるのかもしれない。2018/10/05