続・台湾新世代―現実主義と楽観主義

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  • サイズ B6判/ページ数 251p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784773630022
  • NDC分類 302.224
  • Cコード C0036

出版社内容情報

好評『台湾新世代』の続編。日台国交断絶(72年)後初の毎日新聞台北特派員として、2000年の歴史的な政権交代を取材した著者は、帰国後経済部長として関西財界を取材するなかで、世界経済・政治における台湾の存在感を改めて認識。次回総統選の08年は、北京五輪が開催される。その間に陳水扁は「自立」をめざす。日中台の競争と協力関係をぬってしたたかに生き抜く台湾人の知恵と活力を活写。前著と併せて台湾と両岸関係の将来が見えてくる。

●まえがき

【第1章】躍進続ける経済

1 緑のシリコン・アイランド(液晶パネルで日韓と競う/ノンブランドのIT大国/ハイテク産業の揺りかご、サイエンスパーク/「台湾のビル・ゲイツ」は語る)

2 世界に冠たるTAIWAN(世界一のノッポビル/日本の新幹線が台湾を走る/アジアのハブ港)

3 伝統産業も健在/成功した構造転換/進化を続ける自転車メーカー/マグロの水揚げに沸く港/烏龍茶の故郷)

4 先進経済の課題(克服できるか「日本病」/行きづまる核廃棄物処理/外国人労働者が生む摩擦/アジアの研究・開発拠点に)

【第2章】転機に立つ対中関係

1 深まる経済関係(危機感高まる中国依存/三通の行方/大陸進出のパートナー)

2 中台対話は復活するか(中断したままの対話/六〇年ぶりの国共首脳会談/胡錦濤政権の台湾政策/米国のスタンス)

3 緊迫度が増す軍事対立(中台最前線の島々/危機と隣り合わせの台湾海峡/両岸を遠ざける「反国家分裂法」)

4 内なる「中華」への思い(心を打った亡命中国人作家/媽祖の里帰り/「近代中国史の生き証人」の死/揺れる北京五輪への対応)

【第3

まえがき

 敗者はエネルギーを爆発させ、勝者は努めて平静を装う。二〇〇四年三月二〇日に行われた総統選挙の後、台湾では奇妙な光景が繰り広げられた。

 選挙は与党・民主進歩党(民進党)の陳水扁総統が再選を果たしたものの、投票日前日に起こった銃撃事件の衝撃と、コンマ以下の得票率の差が勝者と敗者を分けるというあまりの接戦ぶりに、街には戸惑いが広がっているように思えた。

 私は翌朝、中国国民党(国民党)や親民党など野党支持者ら一万人以上による抗議活動が続く総統府前を訪れた。陳水扁総統の退任を求めるシュプレヒコールと怒号が響き、警察が厳重な警備に当たっていた。

 全島を二分した激戦は、台湾社会に大きな傷跡を残した。不満と憎悪が渦巻く現場に立ち、私は二期目の陳水扁総統が背負う重荷を肌で感じた。

 あれから一年以上が過ぎた。台湾は表向き、平穏を取り戻したように見える。しかし、住民の間に刻まれた亀裂が解消したわけではない。陳水扁総統の再選で台湾自立化路線が強まる流れにあるが、総裁選挙九カ月後の立法委員(国会議員)選挙では中台融和を唱える野党連合が勝利を収めるなど、台湾の内政は相変わらず不安定な状態らの脱却を狙う。

 中国の胡錦濤国家主席はこの年開催する北京五輪を成功させ、飛躍への足場を築きたい。そのためにも台湾の新憲法制定・施行など「独立に向けた動き」を認めるわけにはいかない。国民党の連戦主席、親民党の宋楚瑜主席と台湾の野党党首を相次いで北京に招いて会談し、「台湾独立反対」を確認するなど、激しい揺さぶりをかけている。

 双方の立場は、とても一致点を探り出せないように見える。果たして、この攻防はどんな結末を迎え、その後の中台関係はどう展開していくのだろうか。それを予測するには、台湾はどんな特徴を持ち、どんな存在なのかを知っておくことが不可欠だ。

 経済分野、特にIT(情報技術)産業では、台湾は世界で極めて重要な役割を演じている。そして、そこでは台湾と日本、韓国、中国が競争と協力を繰り返しながら発展している現実がある。本書の冒頭で紹介している液晶パネルに関連する部分の原稿は、何回も書き直さなければならなかった。企業同士の提携や撤退、訴訟合戦など、本書を執筆している間にも、めまぐるしく状況が動いたからである。企業間の合従連衡は国や地域を越え、東アジア全体に広がっている。

 日本や韓国ない。本書が台湾経済の説明にかなりのページ数を割いているのは、そうした理由による。

 ただ、技術を日米など先進国に頼るだけでは、いずれ中国などにキャッチアップされる日がくる。また最近、台湾経済は中国への依存度が高まり、失業率の上昇や技術流出など新たな問題を抱えている。高コスト構造や金融システムの機能不全などの症状も表れ、曲がり角にさしかかっている。中国への過度の傾斜は安全保障の問題ともリンクし、台湾に難しい問題を投げかけている。ここをどう乗り切るか、今まさに正念場を迎えている。

 そんな情勢認識に立ったうえで、改めて「二〇〇八年の攻防」について考えたい。

 台湾内では、中国との統一・独立問題でどちらかに一定以上振り子が振れると、必ず逆作用が働く。二〇〇四年の総統選挙と立法委員選挙で示された正反対の結果も、有権者のバランス感覚が生み出したものである。中国とはますます経済関係を深めていくだろうが、中国に取り込まれることなく、ビジネスを進めていくはずだ。

 「名」より「実」を取る。変革は望むが拙速は避けじっくりと――。

 これが近代以降、日本と中国という大国に翻弄されながらも、したたか触れていなかった台湾経済の紹介にも力点を置いている。その意味で本書を『台湾新世代』を補完する続編とした。

 日本では対中関係が悪化するに従って、中国を牽制するカードとして台湾を使おうとする動きが強まる。台湾問題を考えるには、まず台湾理解を深めることが重要であることは言うまでもないが、対中カードとしての位置づけにすぎない限り、台湾に対する見方は日中関係の現状に左右され、ぶれやすいのが実情である。

 台湾海峡をめぐる対立をいたずらに煽るのではなく、冷静に現実を見つめたい。本書がその一助になれば幸いである。

陳水扁再選後の台湾は中国の政治的圧力をはねのけ大陸投資を拡大しつつ自立を模索する。IT大国の現在と将来を元台北駐在の経済記者が分析。

内容説明

IT大国を率いる二期目の陳水扁はどこへ向かおうとしているのか。次回総統選(08年)は北京五輪の年。対話と自立の間を疾走する「麗しの島」の深層に迫る。

目次

第1章 躍進続ける経済(緑のシリコン・アイランド;世界に冠たるTAIWAN;伝統産業も健在;先進経済の課題)
第2章 転機に立つ対中関係(深まる経済関係;中台対話は復活するか;緊迫度が増す軍事対立;内なる「中華」への思い)
第3章 新時代の政治と住民意識(陳水扁再選後の与野党攻防;二期目の政権運営;高まる台湾人意識;根づく制度と消えゆく制度)
第4章 台湾人気質と日常生活(素顔の台湾人;昔ながらの風景)

著者等紹介

近藤伸二[コンドウシンジ]
1956年、神戸市生まれ。79年神戸大学経済学部を卒業後、毎日新聞社入社。大阪社会部、大阪経済部副部長、外信部副部長などを経て、98年香港支局長。99年台北支局開設に伴い初代支局長に就任。2002年外信部副部長、大阪経済部編集委員、大阪経済部長を経て05年から大阪本社グループ推進本部次長。94年から1年間、香港中文大学に留学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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