出版社内容情報
聖書・ギリシア神話から現代文学まで、物語の主役は欲望の解放と抑制のはざまでいつも揺れ動いてきた。アダムとイヴの〈幸福な堕落〉からカミュの〈不条理〉まで、人間の精神活動を左右してきたのは「好奇心」と「欲望」だ。第2部では、知識の本質とその限界を、神話や古今の文学作品を通して具体的に検討する。構想11年。著者の文学研究は、ついに、現代文明そのものへの批判として本書に結実した。ノーベル文学賞のソウル・ベロー氏も絶賛。
●禁断の知識(下) もくじ
【第二部】――好奇心とタブー――
◆5 好奇心の向こう側
プロメテウス以降
タブーから科学へ
イグノラビムス
魂の欲望
◆6 エデンの園のミルトン
アダムとイヴへの抵抗
アダムとイヴの物語
一定の限界内の知識
叡智に至る下り坂
◆7 ファウストとフランケンシュタイン
ファウスト神話
相反する二つの流れ
『ファウスト』
『フランケンシュタイン』
問題点を共有するその他の作品
過剰の原理――ファウスト的人間
◆8 ラファイエット夫人とエミリ・ディキンソン
クレーヴの奥方に見る禁欲主義
エミリ・ディキンソンの唯美主義
〈禁欲の饗宴〉のエピキュリアン
◆9 メルヴィルとカミュ
ビリー・バッド――写実主義の寓意物語
異邦人――ある内面の物語
二つの例の比較
共感の原理
邪魔になる知識
▼Bibliography
▼索 引
▼参考邦訳文献リスト
▼訳者あとがき
読むたびに圧倒される──ひとことで言えば、私にとって本書はそういう作品だった。それも当然だろう。なにしろ、全米図書賞やアメリカ科学芸術アカデミーの特別賞を受賞するなど、すでに高い評価を得てきたロジャー・シャタックの著述活動の、いわば集大成にあたるのが、この『禁断の知識』なのだから。ソール・ベローやハロルド・ブルームらも、本書を絶賛している。
翻訳の途中で私が送った質問状に、シャタック氏はじつに丁寧で的確な返事をくださったが、それに添えられた手紙によれば、本書は「世の中と文学に関する自分の知識と信念を集約した、究極の成果」だという。最初は、文学作品にまつわる部分のみしか念頭になかったが、やがて、科学やサドについての章も書かずにはいられなくなり、「けっきょく執筆に11年を要し」、「何人もの編集者に出版を拒まれ」た末、ようやく刊行にこぎつけたのだそうだ。
著者シャタックは、〈禁断の知識〉という概念に着目し、それを軸とする独創的な手法で、文学や科学など、広範な分野を考察し、人間社会の抱える問題を浮き彫りにする。すなわち、知識の探究・普及に一定の制限が課せらないと、災いを招きかねない、という危険性だ。知識が爆発
好奇心と欲望を爆発させている子供たちもやがて感情を制御できるようになる。しかし現代社会では、大人になっても爆発の連鎖反応が続いている。
内容説明
知識の本質とその限界を、人類共通の財産である神話や古今の文学作品を通して検討。
目次
第5章 好奇心の向こう側(プロメテウス以降;タブーから科学へ ほか)
第6章 エデンの園のミルトン(アダムとイヴへの抵抗;アダムとイヴの物語 ほか)
第7章 ファウストとフランケンシュタイン(ファウスト神話;相反する二つの流れ ほか)
第8章 ラファイエット夫人とエミリ・ディキンソン(クレーヴの奥方に見る禁欲主義;エミリ・ディキンソンの唯美主義 ほか)
第9章 メルヴィルとカミュ(ビリー・バッド―写実主義の寓意物語;異邦人―ある内面の物語 ほか)
著者等紹介
シャタック,ロジャー[Shattuck,Roger]
1923年ニューヨーク市生まれ。セント・ポール校とイェール大学で学ぶ。第二次世界大戦中は補給大隊のパイロットとして太平洋方面で従軍。ユネスコ(パリ)のフィルム・セクションに勤めたのち、ニューヨークに戻って出版・ジャーナリズム関連のさまざまな仕事に就くうち、ハーヴァード大学の準研究員に指名される。著者はこれまで、フランス文学とギリシア・ラテン古典文学の教授としてハーヴァード大学、テキサス大学オースティン校、ヴァージニア大学、ボストン大学で教壇に立ってきた。1987年、その著作活動に対してアメリカ科学芸術アカデミーから特別賞を授与された。1990年には、フランスのオルレアン大学から名誉博士号を授与されるとともに、アメリカ科学芸術アカデミー会員にも選ばれた。また文学研究者・批評家協会の発足にあたってはその設立に尽力し、1995年には同会会長にも選ばれている
柴田裕之[シバタヤスシ]
1959年東京生まれ。早稲田大学、Earlham College(米国)卒業。翻訳家。主な訳書に、M・シーゲル『ディマジオの奇跡』(宝島社)、H・E・ソールズベリー『ヒーローの輝く瞬間』(NHK出版)、W・ダルリンプル『精霊の街デリー』(凱風社)、B・ホワイト『ママは決心したよ!』(白水社)、J・ホークス『死、眠り、そして旅人』(彩流社)、N・バーリー『死のコスモロギー』(凱風社)N・バーリー『スタンフォード・ラフッルズ』(凱風社)、W・J・ベネット編著『不思議な翼』(実務教育出版)、J・カベロス著『Xファイルの科学』(バベル・プレス)
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