内容説明
病身の青年に寄せる中年婦人の献身的愛、有閑夫人の危険な火遊び、身分違いの結婚が生む悲劇…『人間の絆』に先立つモーム30歳の作品。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アカツキ
17
20歳も年下の肺病青年に恋する中年女性ベラ、上流階級のキャスティリヨン夫人の危険な火遊び、清廉でありたい上流階級青年バジルの身分違いのできちゃった結婚。そして、それら同時進行のドラマを眺める富豪で老齢のミス・リー。めっちゃ面白いメロドラマ。ベラの話はただただ美しく、火遊びはスキャンダルになって終わると思いきやハッピーエンド!キャスティリヨン夫人が夫とやり直そうとしてからのエピソードが好き。軽佻浮薄だった彼女の変容に目を見張る。読む作品どれも面白くてモームにハマっちゃいそう。2022/01/11
きりぱい
8
素晴らしくよかった。モーム作品のなかでも一二を争う好みの面白さだった。財産家のミス・リーが周囲で起ることを思いやり半分、好奇の目半分で観察し、相談を持ちかける者には、本人でさえ自覚していない独善をピシャリと斬る。財産や自己犠牲についてなど、モームの人生観も覗く弁舌さわやかな言葉がとても魅力的。中年婦人の年下青年への恋、不義に溺れる夫人、戯れが足枷になる青年と、直情な行動と改悛を繰り返すドラマがいくつも並行し、高ぶりが何度も訪れる。「彼等を赦したまえ。彼等はその為すところを知らざればなり。」なのだ!2011/03/01
ロピケ
5
のっけからおばさん同士の火花の散らし合い。ミス・リーを軸に、それぞれの登場人物が差しかかった局面が描かれ、どんどん引き込まれた。人間は弱い生き物だから赦してあげる、「人生は短い、世界は生きる者のためにある」ということに納得しつつも、最後の結婚式にはすっきりしない、私のような読者が思うことをフランクが代弁している。それでも、ラストはやはり感動的だ。ラストばかりではなく中盤にも読みながらじわっと来る場面が。階級差を乗り越える問題もテーマの一つになっているのだろうか。バジルでウィルキー・コリンズの作品を連想した2012/03/19
noémi
5
ブラヴォ!と言いたくなるほど圧倒的な感動。大富豪で姐御肌のミス・リーを中心にして回転木馬のように廻る男女の人間模様。英国的偽善とスノッブ臭が蔓延する上流階級。やはり人間は悩む。躓いて転んで苦渋を舐めた人々は、それだけ懐の深い寛容な人間へとそれぞれ成長している。モームの時に諧謔に満ちた鋭い人間観察が、真実を突いていて小気味いいほど清々しい。ミス・リーの終盤の言葉が胸に浸みる。「彼等を赦したまへ。彼等はその為すところを知らざればなり」。いつもは御意見番のミス・リーも最後には自分のやるべきことが解ったようだ。2011/12/02
なつん
4
舞台は現代イギリスとは大きく異なる、恐らくこの原作が出版された20世紀初頭だと思われます。上流階級である登場人物のその暮らしぶり、優雅さ、したたかさ、そして時に下品さに、読み進めるうち心を惹かれてゆきました。そしてまた、人間の弱さというものは普遍のものであるのだなぁと改めて思わされる作品となりました。弱みを曝け出す人間の姿は、無様で情けないもののように見えますが、一方でその告白は非常に美しいもののようにも思われるのです。この作品の中では、人間の弱さが美しく描きとられていて、心が震えました。2012/04/26
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