出版社内容情報
ジュールとジムは、同じ日に同じ村で生まれた幼なじみ。
ジュールより2分早く生まれたジムは、いつもジュールより速く、強く生きてきました。
第一次世界大戦がはじまり、2人は兵隊に行きます。
しかし戦場は壮大で輝かしいものではなく、泥まみれでみじめなものでした。
いよいよ戦争をおわらせることは決まりましたが、11月11日11時、その時までジュールとジムは戦場へ出向くことを命じられます。そして――
実際の出来事から着想を得て作られた、シンプルなメッセージが深く心に残る絵本です。
作者は『おなじ星をみあげて』(辻仁成 訳、春陽堂書店、2021年)でカナダの児童文学賞を受賞した人気作家ジャック・ゴールドスティン。軽快なタッチに比して、悲しい戦争のリアリティを伝えます。
著者等紹介
ゴールドスティン,ジャック[ゴールドスティン,ジャック] [Goldstyn,Jacques]
イラストレーター、グラフィックノベル作家。1958年、カナダ・モントリオール生まれ。『おなじ星をみあげて』で「2020年TDカナダ児童文学賞」と「ケベック書店賞ユース部門」を受賞
長友恵子[ナガトモケイコ]
翻訳家、エッセイスト。紙芝居文化の会運営委員。JBBY(日本国際児童図書評議会)、やまねこ翻訳クラブ会員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
☆よいこ
91
戦争絵本。第1次世界大戦カナダの話。赤いポピーは追悼の思いと反戦の願いの象徴▽ジュールとジムは同じ日に同じ町で生まれた。ジムが先で、ジュールはジムの2分後に生まれた。足が速く力が強かったジムは先頭を行きジムは2分遅刻していくけれども、ふたりは気の合う友人だった。戦争がはじまり二人は戦場へ送られた。ジムはいつでも真っ先に敵地へ向かう。あとに続いたジュールの目の前で、ジムは撃たれて死んだ。戦争が終わる2分前の出来事だった。戦争が終わっても、ジュールの時計はいつも2分遅れている▽1918年11月11日午前11時2023/08/01
読特
68
学校に2分の遅刻で先生に叱られる。始業時間に2分遅れて到着し休暇扱いとなる。電車の発車に2分遅れて逃してしまう。後2分で解ける問題が答えを埋められず試験に落ちる。調理時間、火を止めるのを2分遅れて煮立たせてしまう。待ち合わせに2分遅れてふられてしまう。…2分という時間は短いようで貴重なもの。1918年11月11日10時58分。第一次世界大戦の終了2分前に戦死したカナダ兵がいた。後少し、もう少しと悔んでも命は戻らない…。現在進行中の世界の戦争。少しでも早く止めよう。わずかな時間で救われる命がたくさんある。2024/11/17
とよぽん
67
この絵本は、落合恵子さんが紹介していらっしゃったラジオ番組で知った。ジュールとジムの、第1次世界大戦のお話。イギリスの自治領だったカナダで生まれ育った2人は、軍隊に入りドイツとの戦争に。「戦争は、まるで人間を飲みこむ大きななべでした。」と、悲惨で苛酷な果てしない戦争の描写が続く。そして、タイトルの意味が終盤で明らかになる。戦争が終わっても、心が傷ついた兵士はもとの市民にもどれない。スヴェトラーナ・アレクシェーヴィッチの著書に記されたロシアの元女性兵士たちの話もそうだった。2024/08/31
annzuhime
51
図書館本。2分違いで産まれた2人。その2分の重み。そして人間の愚かさと虚しさを知る2分。平和だと思っていた日常で、今では戦争というフレーズのニュースが多い。我が子たちに戦争の愚かさと残酷さを知ってほしいと思い、娘たちにそれぞれ読ませました。小学4年生の長女は戦争と平和について自分なりに受け止めていました。小学1年生の次女にはまた難しかった様子。でも、家族で一緒に過ごし笑える素晴らしさについて話すと、理解してくれていました。2023/06/19
Cinejazz
38
〝ジュ-ルとジムは、同じ日に、同じ町で生まれた幼なじみ。 ジュ-ルより2分早く生まれたジムは、ジュ-ルより速く、強く生きてきた...第一次世界大戦が勃発し、2人は入隊した。しかし戦場は華々しい処ではなく、泥まみれで惨めなものだと思い知らされる...やがて、長く続いた戦争の終結を、11月11日11時と決定されたが、その時間前まで2人は戦場で戦うことを命じられていた。そして戦争が終わるまで、あと2分となった時・・・〟実際の出来事から着想を得て作られたという、悲惨な戦争を伝える心に深く突き刺さる絵本。2024/06/04