日本列島では原発も「地層処分」も不可能という地質学的根拠

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  • サイズ B6判/ページ数 150p/高さ 19cm
  • 商品コード 9784772612135
  • NDC分類 539.69
  • Cコード C0044

出版社内容情報

わが国土の特性は高レベル放射性廃棄物の処分には不向きである。原子力発電を続け次世代に処分を先送りにすることは許されない。 日本列島は地球上でもとくに活動の激しい地殻変動帯に位置している。加えて四面を海洋に囲まれていることもあって多量の降水量が毎年記録されている。これらのわが国土の特性は本書で紹介する高レベル放射性廃棄物などを人の社会から隔離しておく条件から見て誠に不向きなものと言わざるを得ない。……
 放射性廃棄物の後始末が不可能な所で今後も原子力発電を行うということは次世代にこの処分を先送りにする、「後は野となれ山となれ」とその責任を放棄することにほかならない。しかし、この道をとるとしても現在各地の原子力発電所などに積み上げられている過去の原子力発電で発生した高レベル放射性廃棄物の処分は、その受益者である現代に生きる私達が負わなければならない。(「はしがきにかえて」より)

土井 和巳[ドイ カズミ]
著・文・その他

内容説明

原子力発電の可否と高レベル放射性廃棄物処分問題を、日本列島の特性から解明した一冊。

目次

第1章 核分裂の発見と原子力の利用
第2章 放射性廃棄物の定義
第3章 放射性廃棄物の処理と処分
第4章 日本列島と放射性廃棄物処分の課題
第5章 放射性廃棄物管理と原子力開発の今後
第6章 原子力発電、これからどうすべきか

著者等紹介

土井和巳[ドイカズミ]
技術士、工学博士。原子力に関わる地質学的調査と検討。原子燃料公社から動力炉・核燃料開発事業団に30余年所属。地下資源探査、原子力施設の基盤調査などのため全国各地の地質調査、北米地域などを踏査。また、OECD/NEAが主催する放射性廃棄物管理委員会の委員を務め、欧米の放射性廃棄物処分候補地を実見。1953年、東京教育大学理学部地質鉱物学科卒業。1957年、発足後間もない原子燃料公社に奉職。1957~1990年、原子燃料公社/動力炉・核燃料開発事業団(主任研究員)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

たまきら

39
読み終わって、この研究者らしい文章に衝撃を受けている。政府の御用学者によるカルト宗教の本のような「絶対大丈夫」も、反対の立場の一般市民が書く感情的な言葉も苦手な自分にとって、初めて冷静に人類が地球に及ぼした被害と未来への影響を見渡せる本となった。1950年代に原発業界に携わった人々は「原子燃料」を多角的に分析できていなかった。デメリットを深く考えず、国家間の開発競争に参加したのだろう。そして今…世界は最初の開発者たちの懺悔を聞き始めたのかもしれない。これからもこのような本が出版され続けることを望む。2025/04/07

読特

36
数万年の隔離が必要な高レベル放射性廃棄物。氷床処分、海洋処分、宇宙処分はいずれも議論に至らない。唯一検討されている地下深部への閉じ込める手段。しかし、遥か長期に渡って安全な状態を保てるのか?断層、地下水、地殻変動。将来なにが起きるかは未知なこと。溜め続ければ地球上のあらゆる命を奪うことになる。…「電気代が高すぎる」「AIデータセンターを作りたい」。原発再稼働の屁理屈。それは、人類存続よりも大事なことか?「将来世代は困ってもいい。今の自分がよければいい。後は、野となれ山となれ」。そんな人間にはなりたくない。2025/05/14

更紗蝦

30
原子力燃料公社から動力炉・核燃料開発事業団に30余年所属し、地質学的調査を行ってきた者として、著者は、様々な根拠を提示して日本で高レベル放射性廃棄物の地層処分は不可能だと断言し、既に日本が抱え込んでいる高レベル放射性廃棄物については、いかに困難であったとしてもわずかに残された道の開発に努力を傾注すべきと述べており、著者の誠意と責任感は伝わってくるものの、「実現性は限りなく低くても、とりあえず処分方法の研究はしている」というポーズを盾に、国は原発推進を続けるであろうことが予想できてしまうジレンマがあります。2024/11/15

壱萬参仟縁

23
1966年本邦初の原発開始(3頁)。高度経済成長に浮かれる熱狂の蔭でひたひたと危機が進行していった背筋が凍る現実。IAEAの放射性廃棄物の定義は、国の規制担当機関が定めた値以上に放射性核種を含む、又は同核種に汚染された廃棄されるべき物質(32頁)。中間貯蔵とは、原子炉で所定の燃焼期間を経て炉から取り出した使用済み核燃料を、数十カ月は崩壊熱が収まるまで炉近辺に設けられたプールで冷却後、高レベル放射性廃棄物として貯蔵(52頁)。巻末に用語解説がある。2015/02/12

のぶ

4
本書の著者である土井氏は93年に原発廃棄物に関する本を出していて(推測だけで言ってしまいますがたぶん「頑張ればなんとかなるだろう」という立場での技術書ではないかと思う)、20年たって今般ついに「ダメです無理です」と言明した、こういう流れなのでしょう。すでに退職しているとは言え、原子力村の中で30年に渡って研究を続けていた人物が、その村内での人脈も自分の仕事の業績もひっくるめて全部チャラにするような、ある意味内部告発本とも解釈できる本を出すというところに、文章の分量は少ないけど真実の重みを感じさせる本です。2015/01/02

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