内容説明
精神疾患などの当事者が文学・芸術・娯楽作品を通して自身の体験世界を記述することで、健康な人にはない視点が立ち上がる。編者は当事者批評概念を提出を念頭に、自他の研究を区分けして現在地点を明らかにしつつ、「当事者としての」さまざまな当事者性をテーマとした対話、「当事者としての」ハイデガー、カント批評といった試みへと探求を進める。一風変わった発想のなかに、ケアに活かされる気づきや文芸解釈としての新たな可能性が光る。
目次
第1部 当事者批評の来し方・行く末(当事者批評の背景―病者の光学とケアの倫理;当事者批評の現状報告―総合型、個人研究型、対話型;脳の多様性を映しだす自己世界―改めてなぜ「みんな水の中」なのか)
第2部 当事者としての対話に臨む(当事者研究からオートエスノグラフィーへ/オートエスノグラフィーから当事者研究へ;「脳の多様性が切り開くワンダーランド」とは?;発達障害を持つ私たちは、いかにして混沌とした世界を再構築していくか;心と体の困りごと;私は「この私」を通じてしか世界を経験できない;自助グループはハームリダクションされた宗教!?)
第3部 自閉スペクトラム症者としてハイデガー、カントを読む―当事者哲学に向かって(「脳の多様性」とマルティン・ハイデガーの思想―人文学が福祉および医療と出会う;イマヌエル・カントの人間観に対する当事者批評)
著者等紹介
横道誠[ヨコミチマコト]
1979年生まれ。大阪市出身。京都府立大学文学部准教授。専門は文学・当事者研究
石原真衣[イシハラマイ]
北海道大学アイヌ・先住民研究センター准教授。北海道サッポロ市生まれ。専門は文化人類学、先住民フェミニズム。著書に『〈沈黙〉の自伝的民族誌』(大平正芳記念賞受賞)など
斎藤真理子[サイトウマリコ]
韓国語翻訳者。2015年、パク・ミンギュ『カステラ』(ヒョン・ジェフンとの共訳、クレイン)で第一回日本翻訳大賞受賞。2024年、ハン・ガン『別れを告げない』(白水社)で読売文学賞(研究・翻訳部門)受賞
高野秀行[タカノヒデユキ]
1966年東京生まれ。ノンフィクション作家。早稲田大学探検部在籍時に書いた『幻獣ムベンベを追え』でデビュー
頭木弘樹[カシラギヒロキ]
文学紹介者。筑波大学卒。二〇歳で難病になった経験から『絶望名人カフカの人生論』(新潮文庫)を編訳
柴崎友香[シバサキトモカ]
小説家。2014年『春の庭』で芥川賞、2024年『続きと始まり』で芸術選奨文部科学大臣賞、谷崎潤一郎賞受賞
松本俊彦[マツモトトシヒコ]
精神科医。国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所薬物依存研究部部長/同センター病院薬物依存症センターセンター長。1993年佐賀医科大学卒業。神奈川県立精神医療センター、横浜市立大学精神科などを経て、2015年より現職(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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