内容説明
「自閉スペクトラム症ではないか」と“わかる”のはなぜか?―心理療法場面で、自閉スペクトラム症や統合失調症スペクトラム障害のクライエントとのあいだで生じてくる独特な感覚やつながりをもつことの難しさを多くの臨床家が感じているのではないだろうか。実際のところ近年、自閉スペクトラム症と統合失調症スペクトラム障害における近似的な特性や状態像が、より注目されるようになってきている。本書において著者は、心理療法場面でそのようなクライエントとのあいだで生じる独特な感覚やつながりをもつことの難しさに着目し、精神病理学の碩学、木村敏の自己論を心理療法に活かすことができるということを、自閉スペクトラム症と統合失調症スペクトラム障害の事例を通して詳述していく。著者は、従来の精神病理学が統合失調症スペクトラム障害の理解に力を注いできたのと同様に、自閉スペクトラム症に対しても、問題行動や症状の背後にあるものは何だろうかという問いとして、精神病理学の視点が適用可能であると考える。そして本書が目指すのは、クライエントとの「つながらなさ」への心理療法と精神病理学を統合して臨床に活用する試みである。
目次
第1部 理論編(木村敏の自己論の変遷―「自己の成立」の視点から;治療者としての木村敏;自閉スペクトラム症と統合失調症スペクトラム障害の心理療法にむけて―木村の自己論からのアプローチ)
第2部 事例編(自閉スペクトラム症の思春期女子の心理療法―木村の「主語的な自己」「述語的な自己」概念による心理療法の原点となった事例;自閉症児の心理療法―クライエントとの水平の“呼応”をめざして;統合失調症の心理療法―セラピストの自己の危機を通して;妄想性障害(関係妄想)の心理療法1―クライエントとの共有の体験と自己の生成へ
妄想性障害(非定型精神病)の心理療法2―内部完結した語りを聴き続けること
「主語的なこと」と「述語的なこと」―そこに動きを見出すこと)
著者等紹介
白井聖子[シライセイコ]
1968年愛知県生まれ。2022年名古屋大学大学院教育発達科学研究科博士後期課程修了。博士(心理学)。臨床心理士。公認心理師。精神科病院、クリニックにて心理士として従事。現在、医療法人山水会香椎療養所に勤務(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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